ただAmazon Goと違うのは、その商品を店に置いていく必要があり、店員が自宅まで届けてくれることだ。そして、配送の際に、商品の代金を支払えばいい。

 同社は、10年を超える実績を持つこのサービスを、Amazon Goの発表に乗じて再び宣伝を行った。しかも、笑ってしまうほど、Amazon Goの動画にそっくりだ。完全コピーといってもいい。

 はじめに登場する男性の格好から、すべての登場人物を似せている。登場人物は、普通のスーパーやコンビニエンスストアとおなじく、カゴに商品を入れて買い物をする。もちろん、カゴではなく、自前の買い物袋でもいい。

 Amazon Goではアプリが必要だがMonoprixはアプリは必要ない、だから、パロディ動画では、登場人物の女性はスマホを取り出すものの、単にメッセージソフトを開きおしゃべりをするのみだ。女性はレジに大量の買い物商品を渡すが、そのまま帰宅する。

 つまり、レジでの決済がないアイデアは、古くからあるのだといいたいようだ。最後には、「Monoprixをよろしくね。シアトルは遠いからね(Amazon Goの実店舗のこと)」と笑わせる。フランスの同社は、アマゾン的な機械処理に対して、人間が対応することの優位性を語る。単に競合他社の動きを脅威に感じるだけではなく、これを自社宣伝に変えてしまうのだから、フランス人もなかなか面白い。

Amazon Goのその先

 一方でAmazon Goも完璧ではない。お客が多人数となり、そして、あまりに素早い動きの場合は、なかなか正確に商品をカウントできないため、必ずしも順調ではないようだ。コンピューターによる擬似視覚技術、センサー、ディープラーニングなど、まだ改善の余地が残っているに違いない。

 ただし、これも過渡期だといえる。アマゾンはホールフーズの買収からも明らかのように、リアル店舗に対抗するというよりも、すべての小売と物流を支配しようとしている。ホールフーズを買収することで、生鮮食品の仕入れルートも強化できるだろう。リアル店舗でのビッグデータも収集できるだろう。

 上述した「Anything Goes」「Monoprix」といった動画のほかにも、パロディや揶揄するもの、批判的なものがあるが、それは逆にいえばアマゾンへの恐怖心を裏返したにすぎない。本当に笑えないからこそ、パロディが存在しうる。

アマゾンの野望、またしても広がる

 アマゾンは、ある予想によると、次は(日本でいうところの)ドラッグストア事業に乗り出すのではないかという。薬局やドラッグストア事業は、規制も多く、参入が難しいとされている。が、アマゾンが不可能というわけではない。ただ、アマゾンがビッグデータを元に、ヘルスケア事業を開始したら、相当な数のドラッグストアが影響を受けるに違いない。もしかすると、アマゾンは、消費者が日ごろ購入している商品データから、健康的な商品やサプリを提案できるようになるかもしれない。

 さらに薬局事業で、個々人に処方される薬は、想像もしないような情報となって、多くの商品販売機会を生むだろう。Amazon Goではないが、アマゾンIDを中心として、さまざまな医療サービスが展開されるかもしれない。それは、先進国で多く見られる、高齢化社会への対応としては、優れたものだろう。

 まさか、ビッグデータを活用し、アマゾンが製薬会社にはならないと思うが……。いや、そうだ。同社は、これまで「そこまではやらないだろう」という大衆の思い込みをつねに覆してきた。パロディとしてAmazon Goを笑える頃は、まだマシということか。