私は2009年ころから、月額有料会員に専門分野のトピックスと解説を届けるニュースレターを発行している(のちにこれは有料メルマガといわれるようになった)。当時は、クレジットカード会社に問い合わせても、業者に問い合わせても、読者に定期課金をする方法がわからず苦労した。かといって、読者に毎月、請求書を送るわけにはいかない。そんなとき、はじめてPaypalを使ったら、ただちに定期課金ができて驚いた。

 そのとき、ぼんやりと、ではあるが、これは世界を席巻するに違いない、と思った。

フィンテックはサプライチェーンに何をもたらすか

 BtoCやCtoCで成功したモデルは、次にBtoBでも変革をもたらす。このインターネット上での支払い革命は、次にフィンテックと呼ばれるようになった。これまたご存知の通り、金融(finance)と技術(technology)を併せたものだ。決済サービス等に、最新IT技術を使って効率性を高める。

 それまで、海外取引先へ代金を支払うのは難儀だった。信用状や荷為替手形など、さまざまなものがある。手数料が生じ、さらに時間もかかった。T.T.Remittanceという電信送金手法はあるが、同じく手数料がかかる。先進国であれば、まだ安心できるところだが、新興国であれば不安要素が残る。

 それらが高速化し、かつ安価になり、信頼度もあがるのだから、商売としてはメリットが大きい。例えば、買い手からしてもサプライチェーン全体のリードタイム短縮に寄与するだろう。売り手からしても、資金の短期回収ができる。キャッシュフローの改善にもつながる。

 実際に、米アップル、米P&G、独シーメンスなどのグローバル企業は、このフィンテック企業を活用することで新興国のサプライヤーを支援している。また、新興国にいる企業にとっても、大規模なアプリケーションの導入などは必要がない。さきほどのAlipayにしても、ORBIANにしても、C2FOにしても、ウェブベースで操作できる。サプライチェーン業務における、「発注」「調達」「支払い」のプロセスを完結できる。さらに、支払い条件は取り引きによってさまざまあるものの、サプライヤーがもし早期の対価受け取りを望むならば、それを選択できる(その金利分は差し引かれる)。

 これまで人の手が介在している金融サービスは、必然的に手数料がかさんでしまった。しかし、フィンテックではサーバーが処理をする。銀行手数料がかからないモデルなので、その削減額を再投資に回せばいい。

フィンテックとサプライチェーンのこれから

 ある記事は、「クレジットカードはFAXの道をゆく(それだけ衰退する)」と述べたが、それは旧来的な銀行業務もそうかもしれない。

 さらに現在では、ビットコインのような仮想通貨もある。これを使って、サプライチェーン上の取引を完結させれば、円・ドル・元のような国家通貨すら不要になる。為替変動にも国家破綻リスクにも無縁だ。ただ、その仮想通貨自体の高騰・下落が生じるため、いまのところ、ただちに日本企業がビットコインなどを取引決済通貨として使うとは考えにくい。少なくとも、私たちが行ったアンケート(対象約5400人)では積極的な答えはなかった。

 ただし、企業間の売買においてフィンテック企業が存在感を持ちはじめ、資金調達の手段として認識されるようになると、これまでと違った支払い手法が登場するかもしれない。特に企業の取引先が、近隣国だけではなく、世界各地に拡大する中、このフィンテックが重要視されるのは間違いない。それまで知らなかった世界のどこかの企業から、ただちに支払って購入しなければいけないとき、その利便性が企業の業務プロセスに一つの武器を与えるだろう

 それにしても――と思うのだ。

 あの受講生は何のために聞きにきたんだろうか――と。