フォックスコンの構想と州の負担

 ところでウィスコンシン州に建設されるフォックスコンの新工場は、ディスプレイの製造を担う。報じられたところによれば、同工場には移動に関わる問題があるという。

 増え続ける(と予想される)従業員の工場内移動。ならびに、外部からの物品の配送、通勤時のラッシュなどだ。とくにピーク時の混雑はいまから予想される。州も、主要道路を拡大することを計画しているようだ。車線を大幅に増やすとしている。

 また、フォックスコンは自動運転車の利用を検討している。州にも提案しているようだ。貨物の配送や、内部での移動など、実現すればフォックスコンにとって利益は大きい。同時に自動運転技術の実現は、その後のフォックスコンのビジネスにも好影響を与えるかもしれない。かっこよくいえば、スマートシティー構想で、フォックスコンの招来とともに、通信で管理された工場城下町を建設しようとしている。

 ただ、公共インフラについてはフォックスコンが面倒を見るわけではないので、州にとってみると、安くない投資になるだろう。

 もともと工場関連の投資だけで額は100億ドルをゆうに超える。当工場の敷地はもともと農地で、移転が必要な市民も多く、1エーカー(4047平方メートル)あたり5万ドルものプレミアムを支払うとフォックスコンは提案した。

フォックスコンと企業のサプライチェーンの明日

 フォックスコンだけでは当工場のプロジェクトは成立せず、ウィスコンシン州も資金調達を担っている。さらにコストがどれだけ上昇するかもわからない。トランプ大統領は、中国からの製品に関税をかけることで、米国内への投資を旺盛にしようとしている。このフォックスコンの工場が成功すれば、いくつかの企業は米国への大型投資に踏み切るかもしれない。

 フォックスコンの挑戦、米国内における生産がはたしてサプライチェーンに好影響を与えるのか、各社はフォックスコンの動向を注視している。

 米国内の販売はまだしも、海外向けの販売をどうするのか。実際に、ハーレーダビッドソンはEU向けについては高関税に耐えきれないと判断し、米国から外に出すと発表し、トランプ大統領の怒りをかった。

 ところで、企業では調達・購買関連部門が、どこから何を調達し、どこの国に収めるかを集中的に検討している。今回、トランプ大統領がしかけた米中貿易戦争で、日本企業でも、調達・購買部門が影響を受けている。当部門は日々、関税を含めてもっともすぐれたサプライチェーン網を構築しようとする。しかし、関税、政治、あまりにも多くの因子がからみ、最適解を導くのが困難になっている。

 私は、正直にいえば、米国に製造業が全面回帰しないと思っている。労働集約型ではない工場なら可能だろうが、それならば雇用は生まれない。ただし、トランプ大統領は、あくまで製造拠点にこだわる。

 企業の調達・購買部門にとって、視界がクリアになる日は、いまのところ見えない。