日本企業が学ぶべき点

 こういった取り組みは、アマゾンの物流量があるから、物流配送のノウハウをもっているからと片づけてしまうのは早計だ。アマゾンが構築した仕組みは、新規操業のリスクを細分化して、提供できる部分は積極的なサポートを提案している点にある。今の日本企業のサプライヤー活用でも学ぶべき点がある。

 日本国内では、多くの中小企業が、業績が黒字であったとしても、事業継続を断念するケースが増えている。倒産と比較して、事業継続を断念した休廃業の発生件数が実に5倍にも上る地域もあるくらいだ。こういった状況へ至る原因の多くは後継者難だ。ではなぜ、後継者難に陥るのであろうか。一国一城の主として会社を経営してきた姿に魅力に感じない原因は発注企業にも、その責任の一端がある。

 企業の調達・購買部門では、自社ではできるだけリスクを負わずに、サプライヤーにリスクを転嫁している。そういった方針は、コンピテンシーに経営資源を集中し、自社の強みの強化へとつながる施策だ。しかし現在、リスクとして認知されるアイテムが増加し、リスクと名のつく内容はすべてサプライヤーに押しつける事態も、少なからず見受けられる。倫理的な「よしあし」の問題ではない。本来であれば発注側で負担しなければならないリスクであっても、サプライヤーに押しつけているのだ。

 短納期対応や、数量の減少といった一部の当初の発注条件を守れない場合も、発注価格は従来のまま悪化した条件をサプライヤーに押しつけて発注する事例は、バイヤーであれば誰しも覚えがあるだろう。結果的に、サプライヤーの献身的な努力と創意工夫でなんとか乗り切っているのが現実だ。そんな苦労をする姿によって後継者候補が二の足を踏むのは想像しやすい。

 特に大企業からの発注は、多くのサプライヤーである中小企業にとっても、単なる売り上げ以上に大きな意味をもつ。大手企業からの継続的な入金は、金融機関に対する信用力を高める効果を持っている。長期的に需要不足で苦しんだ企業にとって、多少の条件が悪化したとしても、大手企業からの発注は欠かせないと認識している。こういった状況は、発注側と受注側の健全なビジネス関係を育まずに、厄介な依存関係を構築するに至っている。

 依存関係によって、本来であれば取り引きを行わずに他の魅力的なサプライヤーに発注すべき状況であったとしても、過去と同じサプライヤーを発注先として選定してしまう。大手企業が調達・購買業務を改善する際、必ずと言っていいほどサプライヤー数の削減がテーマになるのは、日常的にサプライヤーに発注する価値を見極めていない現在の調達・購買部門の姿を如実に現しているのである。従来の惰性でしかサプライヤー選定を行っていないのだ。

 アマゾンの今回の取り組みは、発注するサプライヤー選定に新しいあり方を提案している。発注側で準備できるリソースを提示して、サプライヤー側で負担する業務内容やリスクの明確化は、まさに真の企業間パートナーシップを現実化しようとする意欲的な試みだ。アマゾンのビジネスは、単に規模が大きいから魅力的に映るのではなく、こういった本質的な改善を志向した戦略にこそ魅力があるのである。何もかもリスクは転嫁すれば良いのではなく、合理的に自社で負担できるリスクを見極めて、サプライヤーに負担させるリスクの分別をしている。

 リスクをすべてサプライヤーに転嫁しても、事業運営のモチベーションが下がれば日本の産業構造は弱体化が進むばかりである。今回の事例を自社に置きかえて考えてみるべきだろう。自社にサプライヤーに提供できるリソースはないのか。そして無理強いして負担させているリスクはないのか。少しでもサプライヤーが負担している理不尽なリスクがあれば、ヘッジの取り組みこそ今、日本の調達・購買部門に求められているのである。

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