テスラはパナソニックと共同運営する米国工場「ギガファクトリー」で電気自動車向けのバッテリーを生産開始する。これにより量産体制を加速する。さきほどフォードがトランプ大統領に翻弄されたさまは書いたとおりだが、一方でテスラが企業時価総額で5兆円を超え、フォードを上回ったのは象徴的だった。

テスラが覇権を狙う電気自動車ビジネス

 また、テスラに関する大きなニュースが入ってきた。同社は、上海に大工場を建設しようとしている。もちろん電気自動車の工場で、中国の動向に合わせたものだと思われる。パリ協定の離脱で皮肉にも注目を浴びた、米国各州の環境規制だが、中国でもCO2排出を抑えた環境規制が実施されている。その動きはこれからも変わらない。

 中国は政府主導で、電気自動車の普及が目標とされている。もはや中国は世界一の電気自動車国でもある。実際に、前述の通り、上海での工場進出が報じられてから、同社の株式は上昇した。

 世界有力の市場として中国はターゲットとなる。独フォルクスワーゲンも新たな電気自動車「I.D.」を中国をターゲットにして発売するとしていた。

 テスラは、数年内に年間50万台もの生産計画を掲げている。そのうち中国が大部分を担う。この動きは予想されたものではあった。2017年3月には、中国騰訊控股(テンセント)がテスラに出資した。その額は17億8000万ドルにいたる。中国の大企業との連携は大きなプラスになると踏んだに違いない。

 もちろん中国への移管は労務費を引き下げるだけではなく、中国という巨大市場の現地で生産する意味もある。中国では外資企業の単独での自動車市場の進出が禁じられているため、ジョイントベンチャーを作る必要があり、まだその提携先の企業は不明だが、中国市場の大きな足がかりになるのは間違いないだろう。

 テスラが上海をサプライチェーンの拠点とすれば、部品サプライヤーの新たな集積場となる可能性がある。アメリカのオハイオやカルフォルニア、愛知県三河、中国の広州などに続いて、新たな場として台頭する可能性がある。

 それにしても――、と私は思うのだ。黒川紀章氏が予想した世界が到来してるとすれば、今後も「移動」を提供する企業が勝つ。たしかに、自動車という最強のモビリティー提供企業が日本からはじまり世界を席巻してきた。では、ガソリンではなく電気自動車というより最強のモビリティーはどうか。

 異才の書籍をふたたび読み返しつつ、私は氏の予言していた世界に身をただよわせる。