AI(人工知能)の時代がやってきた。新聞を広げてAIという文字が躍らない日はない。AI時代に残る仕事、残らない仕事を分析した書籍は軒並みベストセラーになっている。しかし大手ならばよいとして、人材も資金も不足する中小・零細企業はなにをすべきか。今回は、中小企業診断士の資格を持ち、現場改革のコンサルタントして日々、闘っているリアルコネクトの小倉正嗣氏と、AI時代の企業の在り方について議論した。
中小企業はもはや潰れたほうがいいのか
坂口孝則(以下、坂口):小倉さん、この対談では、これからのAI時代に、中小企業がいかに闘っていくかという話をしたいと思っています。
小倉正嗣(以下、小倉):その前提をまず修正したいと思いますね。

小倉正嗣(おぐら・まさつぐ)氏
国立大学を卒業後、株式会社サンゲツを経て、デルコンピュータに入社。トップセールスとして数々の賞を受賞した後、営業マネ-ジャーとしてダイレクトモデル経営に深く傾倒。その後、アスクルに購買アウトソーシングの新規事業のプロジェクトリーダーとして参画し、複数の新規事業を立ち上げ、その実績は新聞・雑誌に多く取り上げられた。 2013年に経営コンサルタントとして独立。企業の法人営業改革と新規事業開発を中心に、泥臭く数字に徹底的にこだわる現場主義のコンサルティングを行っている。企業の「営業」と「購買」の双方を経験した稀有な経歴を持つコンサルタントであり、『現場』と『論理』の双方の立場で徹底的に現場指導を行う。中小企業診断士・経営管理修士(MBA)。
坂口:どういうことですか?
小倉:まず、坂口さんは、中小企業というけれど、単純に特定大企業の下請けのみを担っている中小企業は存在意義を問うべきですよ。それが修正。
坂口:そういう中小企業は潰れたほうがいい、と?
小倉:いやいや、それは言い過ぎ。だけど存在意義は薄くなっています。もちろん、販売代理店に特化しているなら、まだ可能性はありますよ。それならまだドブ板営業で生き残れます。でも、自ら戦えるプロダクトがない、単なる下請け加工業者なら生きる道はきわめて少ない。これが結論です。
坂口:ほら、一般的には、販売代理店のほうが生き延びられないと言われている。でも、逆というわけですか?
小倉:まさしくその通りです。対面で売るっていうのは、いまはどの企業でも再評価しています。ITマーケティングばっかりのときに、テレアポ訪問できる営業マンはすごいじゃないですか。いわゆるラストワンマイルですよ。
坂口:たしかに、人手不足と言っているんですけど、ホワイトカラーがすべて足りないわけではありません。現場の人間が足りません。もちろん、営業マンはホワイトカラーだけれど、地道な販売活動ができるひとがいない。
小倉:いや、ルート営業なんて、ほぼブルーカラーですからね。私もそうでしたし。最初の会社なんて大企業でしたけど、営業担当が壁紙を担いで現場搬入していました。今でも営業と配送が分離できていない中小企業は山のようにあります。だから、人間関係をお客とつくっていって、それで人間関係ベタベタで販売するのは、まさにAI時代に人間しかできない。だから販売代理店はまだ可能性があると感じています。でも、加工業者で、少数のクライアントの仕事を、口を開けて待っているだけだったら、今後の存在価値は問われていくでしょうね。
坂口:だから、そういう企業はもう潰れる、と?
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