パリ航空ショーで実機が初展示された「MRJ」(写真=中尾由里子/アフロ)

 三菱重工業が、7月1日付けの機構改革で、ユニークな部署の新設を発表した。部署名称は「サプライヤマネジメント部」でMRJ事業部に設けられた。同社が発表した資料を参照すると、同部署の部長には、調達グループのトップが就任する。度重なる納入延期が発表されている国産ジェット旅客機「MRJ」。その量産を担当する三菱重工において、同部署における新たな取り組みが、信頼を取り戻すことにつながるのか。新しい部署には、果たしてどのような期待が寄せられているのか。

サプライヤーを「不公平」に扱う取り組み

 サプライヤーマネジメントとは、購入関係にあるサプライヤーを区別し、貢献度合いによって、「不公平」に扱う取り組みである。貢献度が高いサプライヤーには、より密接な関係を構築して、共同してマーケットを攻略するパートナーとして扱う。一方、単なる購入のみを行うサプライヤーには、発注企業として関与する度合いを低くする、などといった具合だ。

 専門の部署がなくても、サプライヤーからモノやサービスを購入していれば、サプライヤーマネジメントは調達・購買部門のバイヤーによって日常的に実践されている。ポイントは、無意識な対応に終始して成果も成り行き任せか、それとも企業戦略や調達戦略をベースに、確固たる意志をもって、サプライヤーに最大限の貢献を求めてマネジメントするかどうかの違いだ。三菱重工の新たな部門は、事業ニーズに貢献するサプライヤー管理の実践が目的と考えられる。こういった部門新設につながる動きが、この3月から4月に起こっていた。

 同社は4月1日に「民間機調達センター」を神戸造船所に設置した。本社主導による調達業務改革が目的だ。この動きに呼応して、航空機製造の中心的役割を担う2つの事業所の協力会社組織が、相次いで解散した。こういった一連の取り組みの狙いは、大きく2つに整理される。

部品メーカーから機体メーカーへの脱皮

 従来同社は、防衛省向けに加えて、米ボーイングで製造される旅客機の、機体の一部を担当する部品メーカーの位置づけだった。部品メーカーと機体メーカーで、製造に必要となる取り組みに大きな違いはない。しかし、部品メーカーと機体メーカーでは、求められる責任が大きく異なる。

 部品メーカーであれば、顧客に部品を納入すれば良い。納入した部品を使用して製造された機体が、どの地域に納入されようと、それは顧客企業がユーザーに対する責任を担う。一方で航空機を自社開発し、顧客へ納入するとなると、部品メーカーとは比較にならない程に、サプライヤーから顧客までをつなぐサプライチェーンが長く複雑化する。三菱重工にとって旅客機の開発は、技術的なハードルと、旅客機メーカーとしてのサプライチェーンを構築するハードルの2つがあったのだ。

 MRJ製造に必要な部品の調達拠点を、名古屋からあえて神戸に移したのは、神戸造船所が担ってきたサプライチェーン最上位に位置する最終製品メーカーとしての部品調達ノウハウにある。有料道路の料金収受システムや、都市交通システムといった、納入後のメンテナンスサービスが欠かせず、サプライヤーのリソース活用が必須とされた製品を製造、納入してきた。このノウハウを活用し、航空機事業を部品メーカーから脱却させる必要があったのだ。