上記3つの問題に対して、ロボットや3Dプリンターの導入は以下のような効果をもたらすと考えられる。
- リードタイムの長期化→現在、外部に委託している工程を自社で引き受けることで、全体のリードタイムを短縮しうる
- サプライチェーン管理の煩雑化→同じく、複数社管理から、自社内工程に移るため、管理は簡易化できる
- 震災等リスクの上昇→ティア構造を採用しなければ、下部ティアサプライヤが存在しないため、そのリスクは軽減する
もちろん、外部委託している工程を、自社工程に集約するとはつまり、一極集中のリスクを引き受けることでもある。しかし、これは例えばアディダスがそうしたように、ドイツと米国の2カ所に新鋭工場を持つことで軽減はできるリスクだ。
それよりも、消費者に素早く商品を提供することと、天秤にかけて、やはりサプライチェーン縮小化のメリットが大きいと判断したのだろう。
新興国のこれから
先に論じたとおり、3Dプリンターやロボットが、すべての労働力を代替するというのは時期尚早だ。今からも大量の生産物が、メイドインアジアとして発売されるのは変わらない。しかし、労働コストが上昇する以上は、徐々にロボット代替が進むだろう。
ところで、こう考えると、ロボットなどに代替され、すぐさま剥奪されるような仕事を請け負っているとは、なんというリスクだろうか。
発注側からすると、安価なコスト“だけ”が委託理由だった場合、切り替えても仕方がない。「金の切れ目が縁の切れ目」ならぬ「労務コスト上昇が縁の切れ目」というわけだ。とすると、皮肉ではあるが、ロボットと3Dプリンターが瀰漫し、既存の仕事を侵食するようになれば、それは貴重な“自省”の機会を与えるかもしれない。つまり、各国々が、ほんとうに他国に訴求でき、たやすく代替できない付加価値を見つめ直さざるをえないだろう。
私は思わず笑ってしまったのだが、米国でこんなコラムを発見した。
「ロボットのおかげで、古臭いやり方である、工業化を通じた経済発展を歩んできた国々は、早々に自分たちが行き詰まっていると気づくだろう(Thanks to robots, countries walking the well-worn road of economic development through industrialization may soon find themselves at a premature dead end.)」
笑っている場合ではなかった。ロボットに代替される危機感を抱くべきは、働く誰ものはずだから。
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