アディダスが始める工場革命

独アディダスが工場に革命をもたらすと宣言した。同社は半年間の試行のあと、翌年から、ドイツの自動化工場にて生産したシューズを発売する。くわえて米国の自動化工場での生産量も含めて、これから3~5年で100万足を出荷する見込みだ。
同社の新工場は、いくつかのキーワードにおける象徴になるかもしれない。それは「インダストリー4.0」そして「工場のロボット化」、ならびに「生産回帰」だ。
1980年代から、安価な労働力を求めて、衣料の世界では生産を新興国にシフトしていった。アディダスも例外ではなく、同社は80年代にドイツの工場を閉鎖し、アジアシフトを選択した。
しかし、新興国では労働コストが上がり続けた。これは衣料の世界だけではない。私は電機と自動車のサプライチェーン関連の仕事をする機会が多い。例えば、中国の広州を見てみると、2010年調査時にはワーカーの賃金は月額227ドルだったところ、2013年には437ドルになり、さらに2016年調査時には462ドルになっている(なお、これはJETROのサイトから確認できる)。
また、アジアの場合は、政治リスク、税法リスク、ならびにオペレーションの難しさはやはりある。進出した工場をたたむときも工員に払う退職金が過大になるケースがある。
もちろん一部の国では、エンジニアが育っているため、付加価値を生むようになった。ただ、単純作業であれば、ロボットに任せ、本国に回帰させたほうがよくなる。しかも、機械がやるため時間も短縮できる。アディダスの新工場と、既存工場の時間を比べてみよう。特定の商品の生産で比較すると、アジアのサプライチェーンでは数週間かかるところ、ドイツの新工場では5時間で終了するという。
また、もちろん先端ロボットを導入するため、それまでの作業量よりも増えており、複雑な作業も可能になっている。
ロボット生産の利点
ロボット生産を導入することで、期間以外のメリットも期待できる。さきにあげたコストにくわえ、例えば、生産ロットを少なくできれば、より細かな需要に対応が可能だ。極端な話、1個ずつ生産ができれば、消費者への個別生産(マス・カスタマイゼーション)ビジネスも拡大できる。
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