
このところ米アマゾンのすごさばかりが喧伝されている。当連載でも繰り返したとおり、確かに、世界のすべての小売を飲み込もうとする同社の取り組みは凄まじい。と同時に、ライバルの米ウォルマートも積極的な取り組みで激しい闘いを繰り広げている。
では、その積極的な取り組みとはなにか。
先日、開催された株主総会から資料を見てみよう(正確には「Shareholders Meeting 2018」であり社員も参加している)。会の様子を見ると、さながらお祭りのようではある。なお、今年度は、創始者のサム・ウォルトン生誕100年でありイベントで祝われた。
このイベントで同社は小売業が変わっていること、そして新たなテクノロジーの必要性を強調している。小売業というと、比較的に賃金が安価で長時間労働のイメージがある。対して同社は、これからの成長のためには、社員の教育が必須とし、従業員の教育プログラムを充実する旨を述べた。
ウォルマートの施策
いくつかの施策を拾ってみよう。
●新たな「Scan&Go」
まずウォルマートは、「Amazon Go」(レジ無しコンビニ)の対抗策として、「Scan&Go」を刷新する。「Scan&Go」とは、実店舗で商品をレジに入れたあと、文字通り、スマホなどでその商品をスキャンし(Scan)、そして支払い、店舗をあとにできる(Go)システムだった。しかし利用者はさほど多くなかったとされる。というのも「Amazon Go」はすでにスキャンの必要すらない。新たな施策は、この「Amazon Go」並みか、あるいはそれを超える利便性をもつものとなるだろう。
●富裕層ママ向けビジネス
また、ウォルマートは「Jetblack」サービスを立ち上げている。これは、富裕層のママ向けビジネスであるが、ちょっとわかりにくい。紹介文には、「members-only personal shopping and concierge service that combines the convenience of e-commerce with the customized attention of a personal assistant」とある。eコマースでカスタマイズされた個人アシスタントによるコンシェルジュサービスだ。
相対的にいって、ウォルマートは、この富裕層との相性はさほど良くない。あくまで米国の大衆を相手にしてきた。ただしサムズ・クラブのような例外はあるし、さらにメンズ高級ブランド「Bonobos」も買収した。話を「Jetblack」に戻すと、富裕層ママの好みを徹底的にヒアリング・調査し、彼女に合ったブランドを推薦する。さらにプレゼントを購入する場合には、個別のカードメッセージも届く。デジタルとマニュアルの中間のようなサービスだ。もちろん、中間とはいっても、データ学習から推薦品が導かれる。しかし、どうしても緊急に必要だ、といったニーズには、人間が特別な対応もするという。
ある意味、他社がやらないニッチな分野を攻めているのだろう。今後を見守りたい。
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