今年、材料や部品の供給ストップを原因とした工場の稼働停止が相次いだ。2月の愛知製鋼の工場における事故、4月の熊本地震の被災、そして先週発生した自動車部品会社アドヴィックスの工場における爆発事故で3度目となる。トヨタ自動車とスズキが事故発生後、程なく工場の稼働を停止した。事故発生後の報道では、過去の経験から学び工場停止が短期間にとどまったとされる一方で、サプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性が改善されていないとの指摘は依然として多い。
今年に入ってから既に3度のサプライチェーン断絶が、はたして多いのか少ないのか。今回の事故による影響も、サプライチェーンを管理する現場としては想定内だ。どんな製品のサプライチェーンでも、断絶する危機は日常的に発生している。サプライチェーンを管理する当事者は、直面した断絶の危機の状況を一刻も早く打開し、なんとかサプライチェーンをつなぐために奔走している。批判を恐れずに言えば、消費者が大きなメリットを受ける管理されたサプライチェーンほど脆い。そしてサプライチェーンには、その脆さを抱えているがゆえのメリットも存在する。
「脆さ」のカバーがサプライチェーンのポイント

サプライチェーンを構成する企業には、上図のような機能が、1つの製品を構成する部品すべてにもれなく存在する。図には4つのプロセスを示したが実際はもっと複雑だ。外勤の営業、内勤の営業、生産工程にしても複数の要素によって構成されるケースがほとんどだ。
図のように各部品が4つのプロセスで構成されているとしても、1台あたり2万点とも3万点とも言われる部品から構成される自動車の場合、8万~12万にもおよぶプロセスによってサプライチェーンは構成されている。その8万~12万のサプライチェーンの構成要素の1つでも欠けてしまったらサプライチェーンは断絶する。断絶防止のポイントは、サプライチェーンを構成する各要素の間に存在する溝を埋めるための「緩衝機能」の存在だ。
サプライチェーンを支える「納期フォロー」
サプライチェーンの断絶は、必要な部品が納入されない事態によって発生する。なにも事故や天災のみで発生するわけではない。
企業内でサプライヤーから部品を購入する調達部門が、自ら望まないにもかかわらず行っている極めて重要な業務に「納期フォロー」がある。この納期フォローあってこそ、膨大な部品点数を抱えるさまざまな製品のサプライチェーンが成り立っていると言って良い。
納期フォローは、発注してから納入が完了するまでの期間に、指定した期日に納品されるかどうかを確認する作業だ。納品されない事態が判明すれば、社内外の最新状況を確認して、最終的には顧客と結んだ契約納期を守るためのあらゆる対処をおこなう。では、なぜ納品されないのか。それは見通しと現実との間の「違い」が吸収できないほどに極小化された緩衝機能が原因だ。
変化の中で同じ成果を続けるサプライチェーン
もっとも簡単な未来予測の方法は「前と同じ」だと言われる。前日と同じ、前期と同じ、前年度と同じといった具合だ。サプライヤーへ発注する場合、過去に同じ製品を発注していれば「前と同じリードタイム」で発注する。
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