進む企業経営者の高齢化

 将来ビジネスを見極めるのさえ難しいのに、必要となるサプライヤーの見極めなどできないと考えてしまうかもしれない。しかし2017年の調査でも企業経営者の高齢化は進んでいる。現在の日本では、事業活動の不調によって倒産する企業よりも、経営者の意欲の減退によって事業継続を断念する「休廃業・解散」する企業の数が3.3倍にも達している。大規模自然災害によって発生するサプライチェーンの断絶と同様に、意欲の減退によってマーケットから撤退してしまう企業をどのように救済するかが今、日本経済の大きな課題になっているのだ。

発注企業主導でサプライヤーの事業継続を確保する

 すでにこういった状況に気づき、重要なサプライヤーを集めた取引先協力会の活動を通じて具体的に対応している企業も出てきている。筆者がよく知る日本を代表する工作機械メーカーでは、競合関係にある複数のサプライヤーの経営者を諭し、事業継続を目的とした合弁企業の設立に発注企業として関与している。人口減少時代で、従業員の採用もままならない中、競合によって創出されるメリットよりも、サプライヤーの事業継続を優先して、自社事業の安定を図る狙いだ。

 こういった取り組みの背景には、合弁した企業に対する将来的にも優先的な発注が欠かせない。これは企業の調達部門にとって、発注先選定の可能性を縛るリスクにもなり得る。しかし、競合を続け企業の能力が疲弊するよりも、確実なサプライヤー能力の確保に重点を置いた施策といえる。

調達部門にも許容されるべき「ムダ」

 また、将来必要となるサプライヤーの確保には、結果的に調達活動における「ムダ」の許容が欠かせない。営業活動における新規顧客開発の失敗には寛容でも、新たなサプライヤーの発掘にともなう活動に対する社内の目は厳しい。調達部門だけではなく、社内の関連部門を含めたサプライヤー能力の確認の結果、採用できずに「ムダ」になった結果に対しても、ある程度許容する社内認識が必要だ。自社ビジネスの将来的な維持継続には欠かせない「ムダ」とする社内コンセンサスだ。

 こういった取り組みに弊害となるのは、活動の先頭に立つべき調達部門かもしれない。多くの企業で調達部門は、社内で発生する購入要求で明確にされたモノやサービスの確実な調達が求められてきた。いうなれば、確実な需要に対する対応が調達部門の仕事であり責任だったのである。しかし、大規模災害の被害も企業が存続していれば解消される可能性が高い。企業そのものが存続できなければ、調達部門は後追いでサプライヤーを開拓しなければならなくなるのである。今、調達部門に必要なのは、先を見越した取り組みだ。

 人口減少によって大企業と比較して経営環境がより厳しくなる中小企業の未来に、今こそ対処が必要だ。中小企業の経営者が、事業継続意欲を失ってしまえば、大規模災害など起こらなくてもサプライチェーンの断絶が起こってしまう。調達部門は今こそ、自社の将来ビジネスの可能性をつぶさないためにも、自社の未来に必要なサプライヤーの選定に取り組むべきである。多くの中小企業経営者が将来に悲観し、経営の継続を断念せざるを得ない今こそ、不確実な将来需要に対するサプライヤーの選定が必要なのである。