
日本国内では、経営者の高齢化と後継者難で2020年代に中小企業の大廃業時代が到来するといわれている。一方、多くの業種でサプライチェーンの頂点に立つ東証1部企業の総資産は843兆円と、10年前より40%も増加している。増えた資産には有効な使い道が存在せず経営効率は低下している。日本企業は、サプライチェーンの維持を目的とし、経営者不在で苦しむ中小企業の事業継続に自社の資産を活用すべきである。
自社にとって「宝」であるサプライヤーを見いだせ
しかし、これまで過剰設備に苦しんできた日本企業は、簡単に国内における設備の増強には踏み切らない。もちろん用途が限られ、資産活用の効率性が疑われるような投資は行うべきではない。事業継続に苦しむ多くの中小企業の中から、自社事業にプラスに作用する「宝」である企業を見いだして、自社資産活用先として検討すべきなのである。
自社にとって「宝」である企業をサプライチェーン上で見分けるためには、これまでサプライチェーンの断絶を避けるために行ってきた事業内容の確認が活用できる。自社のビジネスにとっての重要性やマーケットにおける希少性といった点は、すでに多くの企業で確認作業が終了しているはずなのである。せっかく多大な費用と時間を使って入手した情報なのだから、事業継続が危ぶまれる企業が続出している今こそ、平時の事業継続維持を目的に活用しない手はないだろう。
買収先選定に欠かせない戦略適合性
ただし、いきなり購入先であるサプライヤーの中から買収対象となる企業を選定するのも難しいだろう。経営者の高齢化と後継者難による事業継続リスクに対応した、サプライチェーンを維持する買収検討には、一般的にサプライヤーを評価するQ(品質)、C(コスト)、D(納期)の他に、確認すべきポイントがある。サプライヤーの事業戦略の方向性と、自社のそれとの適合性だ。
日本企業におけるサプライヤー管理は基本的に実績主義である。過去の取引関係をベースとした企業間関係の構築が行われている。これは間違いではない。これまでの取引で確立された信頼関係は、将来も同じように継続する可能性が高いと判断するのは正しい。しかし、今日的なサプライヤー管理にはもう一つの視点が欠かせない。それは将来のビジネスに対してどのような戦略を持って臨むかだ。
まず自社の将来ビジネス戦略の確立を
こういった確認には、まず自社に明確な将来ビジネスの戦略が確立されなければならない。その上で将来必要となるリソースを見極める。見極められたリソースを社内で準備するのか、それとも社外から調達するのか。こういったプロセスの中で、過去の実績以外にも将来的に欠かせないサプライヤーの必要要件が明確になるのである。
多くの企業では、具体的に必要となったモノやサービスの調達を行っているものの、将来的に必要となる調達先の確保は、残念ながら手薄となっているのが実情だ。これから先の市場がどのように変化し、必ず起こる変化が自社のビジネスにどのような影響を及ぼすのかを見極めて、将来的に必要となるサプライヤーを見極めるのは、従来の調達活動にはなかった取り組みである。どちらかといえば、調達・購買業務よりも、営業部門の新規顧客開拓に近いアクションが必要になる。
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