
4月18日、経済産業省が大手コンビニチェーン5社と共同で「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定、公開した。大手コンビニチェーン5社のすべての取扱商品数を年間1000億点と推計し、商品のすべてにRFID(Radio Frequency Identification、無線自動識別)タグを貼りつける。そして、そこから得られた情報を活用して、サプライチェーン全般にまつわる作業を省力化し、「サプライチェーンに内在する様々な社会的な課題」を解決する取り組みだ。
サプライチェーン全般を管理
「サプライチェーンに内在する様々な社会的な課題」とは、広くサプライチェーンを網羅して生じている、様々な問題を指している。中でも大きなものに、コンビニエンスストアの宿命でもある24時間営業に対応した、最低限の労働力の確保や、食品ロスの削減といった問題が挙げられる。
コンビニエンスストア運営には、レジや商品補充、棚卸しといった人力による作業が不可欠だ。そういった一連の作業の一部を、RFIDタグで省力化する。絵空事ではなく、レジ業務では、既にローソンがパナソニックと共同で、実店舗における完全セルフレジとRFIDタグを使用した実証実験を行っている。実証実験の結果、従業員の作業軽減と同時に、客数と売り上げが向上する効果も報告されている。
コンビニエンスストアにおける販売時点の省力化に加えて商品補充や棚卸しの段階においては、RFIDタグによって製品の所在を生産工場から物流プロセス、店舗における販売まで管理できるようになる。販売動向の的確な掌握によって、ムダな商品の製造を抑止し、ロスによる廃棄の削減にも活用可能だ。
加えて、消費者の自宅内での生活に必要な備品管理まで広げれば、買い忘れや余計な買い物の防止にもつながる。消費者が購入する必要品すべてがインターネットにつながって情報となり、消費者にとっての利便性にとどまらず、事業者の意思決定に活用される仕組みだ。
仕組みが異なるアマゾンの仕組み
昨年12月には米アマゾン・ドット・コムも同じような計画を発表した。この動画で紹介されている「Amazon Go」だ。全米2000か所で展開を予定する店舗では、スマートフォンのアプリと組み合わせてレジ作業の省力化が可能だ。しかし、店舗における代金決済の仕組みは、日本のコンビニ連合が使用するRFIDタグを使った技術とは、購入品認識の方法が大きく異なっている。アマゾンが採用したのは人の動作を画像認識し、人工知能で顧客が購入したかどうかを判断する仕組みだ。
仕組みの違いは、通販会社としてアマゾンが扱う商品の種類が多く、また販売製品の調達ソースが全世界に広がっており、RFIDタグを貼りつけるような統一した規格をすべてのメーカーに強いるのは難しいからだと推察される。消費者ニーズがあり、売れるものを扱うために、メーカーへ課す制約はできるだけ少ない方が良い。アマゾンは商品を認識し自動的に販売できる仕組みを作るにあたって、RFIDタグを使わずに画像認識や人工知能の技術革新によって実現可能だと判断したのであろう。
現時点で、日本のコンビニ連合とアマゾン、どちらの方式が優れているのかは不明だ。しかし、アマゾンの取り組みを踏まえて、大手コンビニチェーン5社のRFID方式を実用化する際、考慮すべき3つのポイントがある。
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