アマゾンのプラットフォームを使えば、世界中の顧客に販売機会が与えられるし、配送も委託できる。小規模事業者にとってはインフラを一から構築する必要がないぶん、重宝するだろう。先日、米国アマゾンが「Small Business Impact Report」を発表した。
アマゾンは急成長を続けているのでいまさらではあるものの、ちょっと驚くべき内容だった。アマゾンで販売している中小企業社数は、もう100万社を超えている。アマゾンマーケットプレイスが90万人の雇用を創出した、と予測する記述は自画自賛だとは思う。しかし、2017年時点でも、アマゾンで100万ドル以上の売り上げを叩き出す中業企業数は、なんと2万社にいたっている。
アマゾンのプライベートブランド戦略
さらにアマゾンが狡猾なのは、自社のマーケットプレイスを中小企業に提供し、そのなかで売れ筋のものを見逃さない点だ。中小企業はアマゾンを利用することで売り上げを伸ばすものの、アマゾンに売れ行きのデータを渡していることにもなる。
アマゾンにリスクがないとはいわない。ただ、巨大な実験場を保有することで、これまで誰も持ちえなかったビッグデータを有し、そこからプライベートブランドを立ち上げることが可能だ。実際に米国アマゾンでは、アパレルブランドを展開している。これも、これまでの売れ筋を分析すれば、消費者の嗜好に合致した商品開発が可能となるだろう。
米国アマゾンは先日から「wag」ブランドを開始した。これは、ペット向けのサービスブランドで、見ていただくとペットフードなどの商品が並んでいる。人間の次は、ペットのサプライチェーンも制覇しようとしている。
赤ちゃん用のオムツもそうだが、ペットフードはサブスクリプションビジネスとして優れている。プライム会員に誘導し、定期配送と組み合わせれば、他社より優位になるだろう。それなら、ペット用のオムツはどうだろうか? 冗談ではなく、すでに米国アマゾンは実際に販売している。その他の日用品を含めた、彼らのプライベートブランドAmazonBasicsは、あらゆる商品を網羅しつつある。
私が狡猾、と書いたのは、批判ではなく、褒め言葉として用いている。
アマゾンとビッグデータと、ビッグブラザーと
アマゾンのペットフード領域への進出は予想されていた、とする米国の記事もある。アマゾンは他のECサイトに先駆けて、自社のフルフィルメントのプラットフォームを開発し進化させてきた。そして、どこよりも早く、その技術を外販し、中小企業に公開してきた。いまではアマゾン経由が売り上げの大半をしめ、依存度を高くしている。
そして中小企業は、アマゾンがいつの間にか、競争相手となる時代を迎えているのかもしれない。もちろんその驚異は中小だけではなく、たとえば金融業への進出によって大手企業も例外ではないだろう。
冒頭で私は一つのプラットフォームに依存する状況に警鐘を鳴らした。もちろん、アマゾンは無数の中小企業に門戸を開いた点で素晴らしい。しかし同時に、中小企業は複数の手段を持つ、という当然へ回帰するタイミングではないかと私は思う。まさにそれは“常識”の名において。
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