(写真:AP/アフロ)

 先日、某社の会長と対談した。飲食業を手広く広げ、私が卒倒するほどの豪邸に住むその老兵士は、いまだに仕事の進化を忘れてはいなかった。

 これまで飲食業は個人芸だと思われていた。料理の味はどうしても定性的な味覚で表現される。しかし、いまでは毎日データが集計され、個別の売上がすぐさま確認でき、ただちに対策も打てる。無数のレシピから、機械学習によって、地域ごとに評判のメニューを洗い出し、実験を繰り返す。

 さらに店舗設計についても、これまでのノウハウが機械学習され、最適なスペースや動線設計、ならびに客席数を模索する。飲食店は個人芸から、統計学へ脱皮した。

 では、人間がやることはないのか。

 いや、違う。老兵士は、最後は料理人であり、経営者の人間性が固定客を創り出すと言う。コンピューターには、店舗設計の大枠はできても、デザインとアーティスティックな意匠設計まではできない。「いまは激動の時代です。人間がやっていることのうち、機械に任せられるものは、任せねばなりません。そして人間は、人間だけができることに注力していく」。

 早口で私に語りかけ、そしていつしか私は、その老兵士に魅了されていた。

 その熱量は、たしかに、機械にできなさそうな、何かを帯びていた。

倉庫業務に世界の頭脳を集めるアマゾン

 米アマゾン・ドット・コムがきわめて興味深いコンテストを開催する。「アマゾン・ロボティクス・チャレンジ」は自社倉庫で自動作業を行うロボットが競う大会だ。その賞金はなんと25万ドル。日本円で、約2750万円になる。同社は日本の名古屋でその3回目を開催するとし、世界中のチームが参加する予定だ。

 これまでのファイナリストを見ると東京大学など日本の大学が名を連ねており、その他、カーネギーメロン大学など一流どころが揃っている。ロボットは貨物を正しく認識し、それをうまくピッキングし、動線を管理し、さらにはエラー検知もせねばならない。どれだけうまく特定場所に格納できたかで勝者が決定する。

 アマゾン・ロボティクス・チャレンジが開催される「ロボカップ」には、2017年には日系企業も多く協賛しており、2015年の勝者はベルリン工科大学で、吸引器を使ったロボットが、20分で12個のうち10個の荷物を運んだ。2016年にはチームデルフトなるチームが、複雑な課題をクリアした。

 もちろん、これらのコンテストは学術的な研究と産業の橋渡しをする点に目的がある。しかし同時に、アマゾンは大会の成果を実務に活用することも視野に入れているはずだ。

 アマゾンは自社が独自で販売するものだけではなく、小規模業者がアマゾンに委託し発送するフルフィルメント業務も推進している。世界中の販売、倉庫管理と発送業務を一手に担おうとする野心にあふれている。その野心を達成するためには、人手にできるだけ頼らないシステム構築が急務だ。