今、発注企業とサプライヤーの関係は、大きな岐路に立たされている。日本国内における人手不足と、残業規制に主眼を置いた働き方改革によって、サプライヤーは生産能力を思うように拡大できない。一方、一部の業界では需要拡大によって、数年分の受注残を抱えている。サプライヤーの限られた供給能力をめぐって今、生産能力の奪い合いが始まっているのだ。

調達・購買部門が直面する調達環境の変化

 従来日本では、発注者である大企業が強者であり、大企業から仕事を受注する中小企業が弱者といった構図が存在した。現在でも一部の業界を除けば、大企業は強く、中小企業は弱い前提でマーケットが存在している。しかし、昨今の人手不足は、過去から綿々と続く企業間関係の前提条件を変える力を持っている。企業の調達・購買部門は、自社のサプライチェーンを維持するために、このようなマーケットの変化を見逃すべきではない。

 現在、日本国内における需要拡大と、供給能力のひっ迫はどのような状況なのか。最新の平成30年2月の「製造工業生産能力指数・稼働率指数の動向」によると、稼働率は101.9であり、前月比で3.3%上昇している。一方、生産能力は94.4となっており前月対比で横ばいの結果となった。一般的に稼働率指数は、85を超えると景気過熱気味と判断され、物価が上昇するといわれている。すでに多くの調達・購買部門は、こういった環境変化によって購入品の値上げに悩まされているはずである。

 この値上げ要求こそ、サプライヤーの逆襲の始まりだ。供給能力が制限され、需要が高まれば、当然販売価格が上昇する。サプライヤーからの供給価格の上昇を、単に原材料費のアップや人件費の上昇が原因とだけ考えるのは早計である。需要が高まっており、サプライヤーの生産能力を奪い合っている構図の存在を踏まえて対応しなければ、サプライヤーと良好な関係性は構築できない。良好な関係が構築できなければ思うような調達が実現せず、自社のサプライチェーンがサプライヤーの能力不足によって断絶してしまう可能性すら存在する。

これまでとは異なる判断が必要な新社屋建設

 したがって、調達・購買部門では従来とは異なる価値観のもとでサプライヤーに対処しなければ、円滑な調達が実現できなくなると認識すべきである。例えば昨今、業績が好調なサプライヤーの取り組みとして、新社屋の建設がある。

 従来、企業は自社ビルを建設したときから、衰退が始まるともいわれていた。しかし、業績好調なサプライヤーは、自社の生産能力を拡大しながら、新社屋の建設に取り組んでいる。これまでは付加価値を生まない事務所への投資は行われなかった。かといって経営者の虚栄心から新社屋を建設しているわけでもない。人手不足が進み若年層の奪い合いが激化する中、ボロボロの事務所では若手の採用すらままならなくなっているのである。事業継続の必要性から生まれた、新たな従業員の採用に不可欠な新社屋の建設であるという理解が必要だ。