2017年9月に開催されたアップルの新製品発表会。近年、事前に情報がリークされるせいか、発表当日の驚きが少なくなっている(写真:The New York Times/アフロ)

 米アップルが社員に対して情報管理の徹底を呼びかけているブログの内容がリークされた。リークの内容を読むと、29人の社員が情報漏えいをしたことが判明し、12人が逮捕されたとある。逮捕された人の中には、アップルの社員だけではなく、サプライヤーの従業員も含まれているとされる。

 情報管理の重要性は、いまさら強調する話でもない。しかし、アップルがこのタイミングで社員のみならずサプライチェーン上の関係者を含め、厳しく対処する姿勢を明らかにした背景は2つある。社内だけではなく、サプライチェーンに存在するサプライヤーを含めた情報管理の必要性の喚起と、アップルがこれまで徹底活用し効果を生んできた情報管理の重要性を、改めて社員に徹底する狙いが読み取れる。

問題の背景

 アップルの製品情報は、世界中の衆目を集めている。そんな市場における類いまれな評価を、アップルは徹底的に活用して自社製品やサービスを拡大してきた。事実、新製品情報を効果的に公開して、注目を浴びてきた。初めて世に「iPhone」を紹介したスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションを覚えている方も多いだろう。世界に衝撃を与える発表手法は、アップルの強さの源泉でもある。

 しかし、昨今では新製品に関するさまざまな情報が、正式発表前にリークされている。リーク情報には、新製品の外観やディスプレーの大きさ、搭載される新たな機能まで多岐にわたる内容が含まれている。こういったアップルが意図しない情報リークは、発表会の価値を減少させ、消費者にとって発表会の価値を変節させてしまっている。正式発表会は、事前にリークされた情報の確認の場と化しており、従来の驚きや感動が少なくなってしまったのだ。「えっ?!」と驚くよりも、「やっぱり」と予定調和でうなずく場になってしまったのだ。

 こういった変化は、アップルにとって大きな痛手である。消費者をワクワクさせ新鮮な価値を提供し続けるためには、新製品に関する徹底した情報管理、発表する方法へのこだわりが欠かせない。自社発表の注目度をアップさせ、過去と同じようなワクワクする期待を消費者に抱かせるために今回の処置が必要だったのである。

企業における情報管理のポイント

 企業における情報管理のポイントは、情報の「保持」、「公開」そして「共有」。それぞれで狙った効果を創出しなくてはならない。情報によって、公開する方法と範囲、タイミングをコントロールするのだ。

 まず情報の「保持」。自社の競争優位に欠かせない新たな企画や開発に関連する情報は、関係者だけに保って流通させなければならない。公開できない内容は、情報にアクセスできる人間を限定する管理が必要だ。筆者は一度だけアップル本社を訪問した。ドアを入った瞬間、屈強な男性から「用件は?」と声をかけられ、部外者の侵入を許さない厳格な管理を目の当たりにした。この点の管理レベルの高さを示している。

 企画や開発に携わる部門や担当者であれば、情報の秘匿への意識は高いであろう。新たな企画や開発の結果が市場に投入され成功すれば、得られるメリットもあり、情報を流出させる可能性は低い。

 続いて「公開」だ。製品やサービスを投入する市場に驚きや感動を生むために、社内で保持していた情報を広めるのが目的だ。アップルの「公開」方法は、極めて優れていた。消費者に期待を抱かせ、いまかいまかと待ち望む消費者を裏切らない商品を発表してきたのも事実だ。今回の情報漏えい防止の社内喚起は、この効果を再び取り戻したい気持ちの表れと言える。

 最後の「共有」とは、社内の関連部門やサプライヤーが、事業展開の目的を達成するために、足並みをそろえるアクションの「同期」が目的だ。比較的関係者が多く、収益をあげるために欠かせない。このプロセスでは、従来機密扱いだった情報が、関係者に公開される。この段階における情報管理のリスクは、大きく2つに分類される。