ポテトチップスの昔と今

 1980年代の後半、ビデオレンタル店が急速に普及した。同時に「カウチポテト族」と呼ばれる自宅の寝いす(カウチ)に横になり、ポテトチップスを食べながらビデオ鑑賞を楽しむアメリカ生まれの生活スタイルが流行した。ポテトチップスは流行の先端を行くスナックだった。

 しかし糖質制限といったダイエットの流行によって、炭水化物を多く含むじゃがいもを油で揚げて調理されるポテトチップスは、消費者に敬遠される理由の多い食品になってしまった。最新の決算報告では、ポテトチップスの売上は若干拡大している。しかし、健康志向の高まりに代表される消費者嗜好の変化は、ポテトチップスに売り上げの約30%を依存するカルビーにとって、将来的に死活問題へと発展する可能性が高い。カルビーは危機感を持って、ポテトチップスの次なる柱を探している。それは、最新の決算発表にも表れている。

カルビーの次期主力商品

 今年の2月1日に発表された「カルビーグループ決算発表」には、次期主力製品の片りんを感じさせるデータがあった。シリアルの「フルグラ」に関するものだ。拡販を目的に販売費の投下を積極的に続ける商品だ。

 商品紹介のページには、おいしさと簡単に食べられる手軽さと共に、食物繊維を含んだヘルシーさを前面に出している。増産に備え既存工場に投資し生産能力の拡大も行っている。2018年度には、300億円から400億円の売り上げを計画している。順調に売り上げが拡大すれば、ポテトチップスに続く、第2の収益の柱が誕生する。

 ポテトチップスに関しても、新製品やBigサイズが好調に推移することで増収となっている。しかし、消費者の健康志向の高まりは止められない。したがって、カルビーはポテトチップスに過度に依存した収益体質からの脱却を目指しているのである。フルグラの販売拡大には、消費者の健康志向に合致した商品力と、食品メーカーとしての確かな品質管理能力が不可欠だ。

原材料の供給が途絶えたときの選択肢

 今回、じゃがいも不足に直面したカルビーには、幾つかの選択肢が存在した。台風や天候不順の影響があったとはいえ、収穫量は約1割減にとどまっている。しかし、収穫できたじゃがいもを使用して調理するポテトチップスの商品品質が確保できない場合、むやみに生産量を確保することは、これまでつくり上げてきた消費者の安心を失うことになりかねない。

 ポテトチップス国内最大手であれば、その購買力も強いだろう。販売見通し分の原材料は確保できたはずだし、実際に物量は確保しているだろう。しかし、原料の品質が劣っていれば、商品の品質にも悪影響を及ぼす。最終的には、一時的な収益減を覚悟しても、確かな製品を市場へ送り出す企業としての姿勢を優先させたのが、今回の一時休売なのだと考えられる。

品質を優先して、業績のV字回復を目指す

 過去に同じような英断によって、業績をV字回復させている例がある。商品への異物混入によって、関連商品を含めた商品回収を行ったペヤング。そしてBSE発生によりアメリカ産牛肉輸入禁止で、牛丼の販売停止に追い込まれた吉野家。どちらも、主力商品の製造工程や原料に発生した問題で、販売を一時停止した。ペヤングは販売再開後、カップやきそば市場のトップシェアを獲得した。吉野家も、牛丼の販売中止によって急きょ登場させた豚丼をレギュラーメニューに定着させ、定食類にもメニューを拡大している。

原材料の供給が途絶えたとき、どうするか

 従来とは異なる原材料を採用した結果、商品の品質が少し落ちた。それでも販売を続ける選択肢もあっただろう。やむを得ない理由があっても、商品の品質が劣化したと判断された企業への消費者の反応は手厳しい。日本マクドナルドは、中国サプライヤーの問題で、一部商品の販売を停止。1カ月後に別のサプライヤーから調達した商品で販売を再開したものの、業績の低迷から脱却するには長い時間が必要だった。

 原材料の供給が何らかの理由で絶たれた場合、あらゆる手段を尽くして、代替ソースからの供給を模索し、調達を実現させる。それがサプライチェーン管理者の役割だ。しかし、供給ソースが変わったり、農産物のような生育環境が好ましくなかったりした場合、確保できた原材料の品質に問題のある事態もあるだろう。販売停止は、収益減に直結する。ビジネスパーソンなら誰もが回避したい事態だ。そういった難局に遭遇しても、消費者へ提供する価値を省みながらサプライチェーンの管理が必要だ。今回のカルビーの発表には、そんな企業姿勢が読みとれるのだ。