
4月10日、カルビーが主力商品であるポテトチップスの一時休売及び終売を発表した。原材料不足が原因とはいえ、売り上げの約30%を占める商品を、一時的に店頭から消す意思決定の裏には、何があるのか。同社の戦略に迫ってみたい。
天候不順と台風によって翻弄された原材料調達
一事休売と終売は、昨年8月に北海道を襲った4つの台風の影響による、原材料不足が原因だ。相次いで襲来した台風が、大きな被害をもたらした。北海道庁が昨年9月6日に発表した資料によると、農地の被害面積のもっとも広い地域は十勝地方だ。カルビーが調達するじゃがいも生産農家は、十勝地方がもっとも多く、農家数で全体の52%を占める。もっとも被害の大きかった場所がじゃがいも生産の主力地域だったのだ。
農林水産省の「平成27年度いも・でん粉に関する資料」によると、北海道の露地物のじゃがいもは、4月中旬から5月中旬が種付期。8月中旬以降に収穫期を迎える。今回の原材料不足は、生育期の天候不順と収穫期直前に襲った台風による被害の両方を受け発生した。昨年10月にホクレン農業協同組合連合会は、じゃがいもの商品化量が前年度より11%減少する見通しを発表した。しかし、供給可能量が11%減少したとしても、主力商品の販売を休止するだろうか。
原材料にこだわっているポテトチップス
ポテトチップスが小売店から消える事態は、収穫量の減少だけではなく、収穫したじゃがいもの品質に原因がある。カルビーのホームページを参照すると、露地栽培の農産物特有のサプライチェーンが大きく関係していることがわかる。
北海道のじゃがいもは年1回の収穫だ。一方、ポテトチップスの需要は年間を通じて発生する。カルビーは原材料の需要と農産物の供給のアンバランスを解消するために、じゃがいもを貯蔵している。カルビーのホームページによると、貯蔵には4つの工程がある。呼吸の活性化を抑えるドライング。表面の傷を自然治癒力である程度修復させるキュアリング。発芽を抑えるために温度を下げるクールダウン。最後は一定の温度と湿度に保つホールディングだ。これらはじゃがいもに含まれる糖分の管理が目的だ。
ポテトチップスに適したじゃがいもの代表的な品種はトヨシロだ。調理後の変色が少ない。調理後の「色上がり」を重視するポテトチップスの原料には最適である。じゃがいもに含まれる糖分が高いと焦げ「色上がり」が悪くなってしまう。
カルビーでは、じゃがいもの糖度を管理し、ポテトチップスの「色上がり」品質を維持している。昨年の天候不順や台風の影響で、規格に適合しないじゃがいもが多かったと推察される。そしてもう一つ、カルビーには品質を重視し、安心した製品を供給する企業姿勢を打ち出す必要があった。
Powered by リゾーム?