沢渡:でも、結局は、ブランディング活動なんですよ。いま人気職種と不人気職種の差が広がりつつあります。たとえば私のホームグラウンドのIT業界。日本では2030年に70万人~80万人のITエンジニアが足りないと言われています。なにを今更。疲弊していくITエンジニアを見て、優秀な学生さんが自分もそうなりたいと思うでしょうか。

 とりわけ管理職の疲弊。これも大きな問題ですね。中間管理職がプレイングマネジャーになって何でもかんでもやらなければいけない。

 変なプライドを捨てて面倒な仕事はすべてAIにおっつければいい。そして、部下には魅力的な仕事を与えればいい。この職種に就けば、この部署にいればこういう人材になれる、あなたは組織人としてこういう未来が待っている、こういうチャレンジができる、やってみないか、と語ることこそAIにできない仕事でしょう。そういうところに魅力的な人材が集まります。

坂口:あえていうと楽観的すぎるのではないでしょうか。むしろ、このままだと、AIに仕事を意地でも引き渡さない抵抗勢力が生まれるだけだと思いますよ。

沢渡:そうかもしれません。でもチームメンバーで「私たちはどこを目指すべきか?」「自分たち(会社なり部署なり)の『らしさ』って何だろう?」これを真剣に話し合って、魅力的な職場を作っていかなければ未来はないですよ。逆に、そのような地道な活動以外に道はないのです。

坂口:たとえば、私は、働き方改革の目標として、コンサルティング部門の創出があっていいと思っています。たとえば、調達部門のなかに、外販のコンサルティング部門をつくる。それで外部に販売できるくらいのスキルをあげ、コンサルティングできるくらいのレベルにする。つまり、間接部門=コストセンターのプロフィットセンター化です。

 もちろん、コンサルティング部門とは比喩で言っているんで、そのままとらえないでほしい。ただ、いまの仕事をこなして、さらに付加価値をつけるのだから、それくらいの目標をもっていい。そうすれば、社員の仕事への接し方が自ずと異なるはずです。しかも、そのレベルに達したら、自己研鑽としてもかなりすごい。だって、会社にいながら、会社に頼らずに生きていける可能性が高いわけですから。

沢渡:それはいいですね。会社の金で受けられる研修にも真剣になる。

坂口:あれれ、これは賛成してもらえるんですね。たぶん普通に働いていたらまったく分からないですけど、会社ってみんなでいろいろな書類を作っているじゃないですか。その書類をそのまま持っていったら機密漏洩ですけれど、その構造とか本質を学ぶと、生涯の売り物になると思うんですよ。

沢渡:その意味では、働き方改革の波に乗って自分が得するって、そういうことだし、僕はそこに日本企業の大きな強みがあると思っていて、管理職も社員もいろいろチャレンジすればいいと思うんですよ。日本企業はどうせ社員をクビにできない。ならばそれを利用してチャレンジしてみればいい。会社は壮大な実験場です。あ、こういう発想もエンジニアのほうが得意かもしれないな(笑)。

坂口:ということは、働き方改革って、「会社があなたの働き方を、この機会に柔軟に変えてくれるぞ」ってことなんですかね。「この機会に。やりたいことは言ってみろ。それで自分のスキルもあがって、自分の市場価値もあがるぞ」という絶好のチャンスかもしれません。

沢渡:そうそう。だから、働き方改革の目的なんて考える必要はありません。自分が得すれば、楽しめればそれでいいんですよ。

働き方改革は、旧世代の意識改革と同義か

坂口:しかし、楽しいだけっていうのも……。AIがどう進化しようとも、仕事に打ち込み、その哀しみと苦しみと辛さのなかで、人間が成長していくのは、やはり事実でしょう。働き方改革では、その仕事で自分が成長することについても理解してほしい、と思うんですけれど。

沢渡:ですから古いですよ、もうAIとBI(ベーシックインカム)が仕事を軽減してくれる時代になるはずで、その時代を目前にした議論とは思えない。坂口さんに必要なのは、働き方改革ではなく、意識改革だと私は思います。

坂口:すみません。