沢渡:ずばりそうですね。最近は売り手市場ですから、学生もそういう意識が高まってきていて、入社面接のときに働き方改革の取り組みはどうなっていますかとか、あるいはエンジニアとして勉強する時間、スキルアップする時間も取りたいんですけれども、それは両立できるような職場ですかと聞いています。

坂口:学生なのに働き方改革の状況を聞くなんて違和感あるなあ(笑)。

対面しないほうが本音が出る日本人

坂口:仕事後の時間を「自由時間」といいますが、それならば、仕事は非自由時間ということになりますよね。この考え方は、余暇と仕事を二項対立としてしか考えていない気がします。

沢渡:でも、要は働き方改革の本質って、先ほど言ったとおり、いかに関係者が得するかでしょう。仮に、仕事とプライベートが一体となっていてとことん頑張れる職場をよしとする人たちがいて、一方ではプライベートを優先する人がいて、そのお互いとも得だと思えるコミュニティーであれば、別にそれは間違ってないと思うんですね。

坂口:たとえば、ベンチャー企業ではめちゃくちゃに働いています。どんな時代にも上位数%はめちゃくちゃ働いている。5%のエリートだけが24時間働いて、残り95%が定時に帰るという職場も、本人たちが認めていたら、それでいいと。つまり労基法を無視して働きすぎでも、本人が面白いし、市場価値も高まっているからそれでいいじゃないか、ということですよね。

 それはわかるんですけれど、組織が大きくなるほど、そんなに簡単じゃないんじゃないかな。頭では「俺は働くんだ」「俺は楽しいんだ」と思っていても、ずっと人間の感情は一緒ではありません。残りの働かない社員がさほど収入も変わらなかったら、やはり不公平感が募る。

沢渡:坂口さんの考え方は心理学的な配慮をしているんでしょうけれど、古いと思いますよ。決定的に古すぎるといってもいいかもしれません。トップ層が学びを得ていれば、まったく問題ないんじゃないですか。健全な利益体質が確立できているのであれば。問題とすべきは、企業カルチャーと評価システムでしょうね。なぜかというと、この議論はいまのところ、スタートラインに立っていません。それほど多様な働き方がそもそも実現していないからです。

 日本ではなかなかテレワーク、リモートワークが進まない状況にあります。上司はいつも自分の近くにいてくれる部下を評価しますよね。なので、実際はまったく会話がないんだけれども、やっぱり対面でいると何かが安心、何かがあったときに気が利くという評価になりがちなので、どうしても「見えない相手は不安です。見えない相手と仕事はできません。だからうちではテレワーク、リモートワークは認めない」という仕組みになってきている。その場にいない人が不利益を被るわけです。

坂口:うん。ただ、それは企業カルチャーというよりも、接触回数が多い人に好意的な評価を与えるのは人間性の本質でしょう。あえて接触回数の少ない人を評価するのは、かなり難しい。

沢渡:しかし、それがマネジメントだと思うんですよ。目の前にいる人と仕事ができるって、これは当たり前です。目に見えない相手とどうコミュニケーションを設計していくか。あるいは、成果を評価していくか。あるいは困り事、トラブルがあったときに、その面をどう見つけて、どうやって解決に導いていくか。これが、これからのマネジメントそのものです。

次ページ 働き方改革の行き着く先