(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 ニトリが30期連続の増収増益と、31期連続の増収増益見通しを併せて発表した。似鳥昭雄会長は会見で「40期連続の増収増益を目指す」と話した。同社業績の見通しの明るさに株式市場も好感をもって反応し、株価は発表後には上場来の高値を更新した。デフレ時代の優等生と評され、快進撃の続くニトリの強さは、他社と異なる同社のサプライチェーンに源泉がある。

業績拡大と重なる業界慣習と戦った歴史

 ニトリは1967年に「似鳥家具店」として創業した。創業当時から、少しでも安く家具を販売するために家具メーカーと直接取引を模索した。しかし、それは同時にメーカーと問屋の結びつきが強い家具業界の慣習への挑戦でもあった。立ちはだかる業界慣習を打ち破れずに、創業の地である北海道で家具を売ってくれるメーカーがなくなると、調達先を探しに本州、九州まで足を運んで取り引きできるメーカーを模索した。

 国内メーカーのみならず1980年代には既に台湾企業からの仕入れを開始。順調に事業を拡大した。また、顧客ニーズに適う製品を家具メーカーが生産していないと判断すると、自ら海外に工場を建設して物流も担い、現在のサプライチェーンの原型を構築したのだ。

 ニトリの強さを語るときに、必ず登場する言葉が「自前主義」だ。事業運営に必要なプロセスのコア業務に集中し、関連業務を社外へ発注するアウトソーシングと真っ向から相反する。当初は家具の流通構造による業界慣習に戦いを挑んだため、続いて消費者ニーズを実現する商品がなかったため、やむを得ず自前主義を採用せざるを得なかったかもしれない。しかし、その自前主義が今、ニトリの繁栄の確かな原動力になっている。

「トータルコーディネート」は商品だけではない

 ニトリの商品展開の特徴を表す言葉に「トータルコーディネート」がある。これは家具を単品ではなく、リビングやキッチン、寝室やバストイレに至るまで、部屋中を統一してコーディネートする前提での商品企画を指す。しかし、ニトリの「トータルコーディネート」は、商品企画にとどまらない。

 会社案内には、ニトリの事業運営におけるもう一つの「トータルコーディネート」の片鱗がうかがえる。事業紹介の冒頭には、製造体制と調達活動、続いて物流ネットワークが紹介されている。消費財を販売する企業でこういった社内リソースが会社案内の冒頭を飾るのは極めて珍しい。

 「トータルコーディネート」によって消費者から支持されている商品戦略と同じように、ニトリの快進撃を支える原動力は、製造と調達、物流をトータルコーディネートして構成するサプライチェーンだ。アパレルメーカーで使用されるSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel、製造小売業)を使用せず、自らを「製造物流小売業」と「物流」をつけ加えて呼ぶのも、よりサプライチェーン全体の自前主義によって網羅する同社の強い意志を感じる。

アウトソーシングによるデメリットの顕在化

 コア業務以外のノンコア業務は外部資源を活用してアウトソーシングし、企業内のリソースの有効活用を実現し業績を向上させている例は、米アップルをはじめ枚挙に暇がない。しかし、アウトソーシングによって外部のサプライヤーの経営資源を活用する代償として、現在様々な問題が顕在化しているのも事実だ。

 近年、発注企業によるサプライヤー管理内容が広範囲かつ高度化し、より相手に立ち入って相互理解を深める必要性が高まっている。サプライヤーから納入されるモノやサービスの納期や品質だけではなく、サプライヤーの業務プロセスでコンプライアンスの確保や、マイナス影響を発生させていないかを確認しなければならないのだ。

次ページ ニトリのサプライヤー管理