(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 2月に支給された年金で、本来受け取る額よりも少ない支払いが相次いだ問題。日本年金機構からデータ入力を委託された業者は、契約上2人1組でそれぞれ入力し、お互いにクロスチェックする作業方法を、実際はスキャナーを使ってデータを機械的に読み取っていた。また契約に反して中国の関連会社に再委託した事実も発覚した。

事前に掌握されていた問題点 

 日本年金機構の「ずさん」な業者管理が指摘されているが、発注後に何度か状況確認していた事実がわかっている。当初800人体制で行うと説明していた作業が、昨年10月の段階では説明と異なる作業人員で行われている事実を掌握し、今年の1月には契約違反行為である再委託の事実もつかんでいた。発注後の状況確認は「ずさん」どころか、適切に実施され実態は掌握されていたのである。

 問題は、事前の説明とは異なる実態を掌握したにも関わらず、具体的な行動へと展開されなかった点だ。結果的に軌道修正が行われず、誤ったデータが納品され、2月の支給額不足へと発展し、問題を深刻かつ大きくしたのである。せっかく問題の発端を掌握していたのに、行動へと移せなかった部分は「ずさん」と言われるのもやむを得ない。

祈る気持ちが事態の悪化につながった

 調達の現場で一度決定した発注先を覆すのは難しい。調達部門にすれば、自分たちの決定の誤りを認める行為にほかならない。複数回行われた発注後の確認も、依頼内容の完成に疑念が生じても、業者は挽回策を準備して、契約を履行する旨を説明したはずだ。だったら、あえて自分たちの誤りを認めるよりも、業者の「できる」「大丈夫」といった発言を信じたい感情が担当者に芽生えるのは、これまたやむを得ない。調達の現場で業務をしている人なら、誰しもが身に覚えがあるだろう。

 こういった発注後に厳しい選択を迫られる事態を回避するには、昨年8月以前に、もっと丁寧かつ深く確認を行って、掌握した内容に即した意志決定を行うべきだった。例えば、業務委託を受けたSAY企画は、いくつかの情報ソースによると、従業員数は、80~110人となっている。

 仮に100人の会社だったとしよう。今回の業務委託内容では、800人の人員で行うと説明していた。現有人員の8倍もの人員を集め戦力化する能力がSAY企画にあったかどうかを日本年金機構の調達部門は確認しただろうか。業務委託内容が正しく行われるかどうかに加えて、社員数の8倍もの人員を採用能力や教育能力が備わっているかが確認すべきポイントに加わる。体制整備の具体的な方法を発注前に確認し、かつ実現可能な確証を得なければ、実現性が担保されず、恐ろしくて発注などできないはずなのだ。

 納入物である入力後のデータは、どんな企業でも同じ内容になるはずだ。しかし業者のもつリソースは異なる。この違いを見極めて、適正なプロセスにより正しい成果物を納入させるのが調達部門の責任だ。結果的に業務委託先選定が「ずさん」だったと言われても、仕方がない。