先ほど私が書いたように、調達の仕事は、納期調整や微細なトラブルに翻弄されている。例えば、取引先からの請求書が間違っているためにプロセスが止まってしまったり、承認が遅れてしまったりする。それらをこのインテリジェント・デジタル・アシスタントは過去の事例から先手を打ち、みずから非効率な時間を削減してくれる。

 そのうち、調達人員がロボットに話しかければ、納期が“怪しげな”注文書を勝手にリストアップしてくれるに違いない。それまでの注文履歴を機械学習すれば、どの注文書に対して注意を払わねばならないかがわかるはずだ。

 そして「この取引先に納期フォローしておいてくれ」と伝えれば、勝手に電話をかけてくれるだろう。もしかしたらメールなのかもしれない。そしてロボットは、もちろん相手側の特徴も機械学習してくれるに違いない。「この営業パーソンは泣き落としが有効だ」。そう判断したらロボットは、浪花節口調で義理と仁義を全面に押し出した交渉をしてくれるはずだ。

そもそも調達人員が不要になる日

 かつて、知人から、このような話を聞かされた。取引先から見積書が届く。それをもとに調達人員が取引先と交渉を行う。そのプロセスを変更した。見積書が届いたら、それをPDFに変換し、中国のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング~業務外注先)に送る。それを受け取った中国側は、その見積書の製品が何かもわからないまま、とにかく日本の取引先に電話をかけて交渉するのだ。「○○円をとにかく安くしてください」と。

 多くの人は笑った。「そんなことで価格が下がるはずはない。プロの調達人員が交渉せねばならない」と。しかし結果は1年後にわかった。プロが交渉しても、誰が交渉しても、ほとんど変わらない値引き結果だったと。

 この知人の話は示唆に富んでいる。自分がプロの仕事と自認していたものも、実はたいしたことがないのではないか。新興国の人員にすぐさま取って代わられるのではないか。そういう危機感だけは持っておきたい。

 実際に、このような論文がある。タイトルは「データを使ってコンピュータが判断したほうがはるかに良い調達ができる(Electronic decision support for procurement management: evidence on whether computers can make better procurement decisions)」だ。価格交渉はプロがやる必要はない。必要なのは統計データにほかならない。統計データさえあれば、新人であっても、ベテランの調達人員を超えることが容易なのだ。

 同じような論文は他にもあり、「調達プロフェッショナルという神話~コンピュータのほうがすぐれた調達が可能(The myth of purchasing professionals’ expertise. More evidence on whether computers can make better procurement decisions)」というものさえある。さらに、経験を積むほどに、勘などが邪魔をしてしまい、むしろコスト削減成績が下がってしまう、とまで述べている。

 なるほど、ベテランになる意味がないのであればロボットで代替したほうがはるかにましというわけか。なお公正に付け加えておけば、挙げた論文はやや難があり、調査データを鵜呑みにすることはできない。ただし、多くの業務がロボット等に代替されるのは、間違いがない。

 納期調整業務がなくなるのは歓迎だろうが、そのうち価格交渉まで代替されるとしたら、もはや戦略構築業務しか残ってはいない。

 あ、もちろん、それもロボットにやらせたほうが良さそうだけれども。