映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は傑作だった。この映画は、サブプライム・バブル崩壊を予想した男たちが、いかに空売りを仕掛け、苦悩し、そして売り抜けて大儲けしたかを描いたものだ。

 米国ではサブプライム・バブル崩壊の前まで、住宅市場に湧いていた。そこでは低年収の人たちでも、たやすく住宅ローンが組め、かつ住宅価格が上昇していたから売却して利ざやまで稼げた。金融屋は、それらリスク債権を複合的に組み合わせることで、リスクをヘッジし(ているように思い込み)、住宅バブルを拡大していった。

希代の変態はサブプライム・バブル崩壊のあと、水に投資する

 そんな中、同映画に出てくる主人公たちは、住宅ローン返済の焦げ付きが目立ってきたことや、街のストリッパーが5軒の家を持ちうる異常さに気づき、巨額の空売りという大勝負に出る。

 この映画は、金融商品のディテールや市場崩壊のメカニズムにまで踏み込んでコミカルに描く面白さがある。米国はサブプライム・バブル崩壊までもエンターテインメントにしてしまうのだ。ただ、それ以上に面白いのは、主人公1人ひとりのキャラクターだ。

 特に、常にヘビーメタルとハードロックを聴き続けながら、部屋に閉じこもって投資を続けるマイケル・バーリが印象的だ。ヘッジファンドのマネージャーである義眼の彼は、医師でブロガーだった。人とのふれあいを嫌い、流布する言説ではなく、自らが集めた情報によって市場を読む。大量の情報を集め、そこから市場の歪みを見つけていく。今回、映画の主題となったサブプライム・バブル崩壊をいち早く見つけた彼が、いかにしてウォール街を手玉に取っていくかは映画を見ていただきたい。

 しかし、映画が終了して、驚いたのは彼の次なる投資対象だ。映画は、主人公たちのその後を字幕で伝えるが、鬼才マイケル・バーリは「水」を投資対象としているという。

 水――だ。

水はビジネスとなり拡大していく

 書籍『地球を「売り物」にする人たち』(ダイヤモンド社)は、やや陰謀論的なきらいがあるものの、地球温暖化をビジネスに利用する動向を紹介していて面白い。氷が溶けるのは、その下の原油利権を狙う人たちにとっては好機ですらある。また保険屋はそこに商機を見出し、雪製造機メーカーは莫大な利益を稼ぎながら販売先を拡大している。

 その中でもページをかなり割いて書かれているのは、水ビジネスの実態についてだ。二酸化炭素の排出と、地球温暖化がどれだけ関係性をもっているか。専門家ではない私は断言を避ける。ただ、気温と水温の上昇は、海からの蒸発を増やすのは間違いない。気温の上昇ゆえに湿気が凝結できず、そして水の需要は増える。

 「気候変動関連投資家にとって、水は明白な投資対象だった。二酸化炭素の排出は目に見えない。気温は抽象概念でしかない。だが、氷が溶け、貯水池が空になり、波が押し寄せ、豪雨が降り注ぐというのは、具体的ではっきりとらえられる」(同書157ページ)。また、世界の人口は増え続けるのに、水の供給が細っていくことは、需給のギャップを生み出す。これまた明言は避けるものの、今後40年程度で、世界人口の50%が水に困るといわれている。

 なるほど、ヘッジファンドのマネージャーであるマイケル・バーリが注目しただけはあるようだ。「世界の水の消費量は1日1人当たり50リットルから100リットルです。ですから不足人口を考えて、それを25億倍してみてください! それだけ必要になるのです。潜在的市場は、と聞くのなら、それがその潜在的市場」(同書119ページ)なのだから。