メイドインアメリカに意味があるか

 私はトランプ氏の主張を読んでも、細部が分からない。ただ、輸入関税については45%を検討する、と示唆している。この45%という高率の根拠が分からなかったが、要するに、そこまでして生産を米国に戻したいという気持ちの表れなのだろう。ただし本当にそうすれば、アップル以外にも、生産の機能を中国などに集中している多数の企業が被害を受けることになる。

 これはトランプ氏のサプライチェーンにおける不理解を示したともいえるものの、たまたま面白い点が明らかになった。iPhoneの生産が戻ってきたとしても、ほとんど意味がない、という意見が出てきたのだ。推測ではiPhoneのアッセンブリコストは、総製造コストの3.6%にすぎないとされる。それは金額にすれば6.5ドル程度なので、輸入関税を高率にしたところでなんら意味がないという。実際に、iPhoneが米国に輸入されてから費やされるコスト(流通、販売、通信、ソフトウエアダウンロード等々)がはるかに大きく、そちらの方が米国経済に貢献している。

 さらに製造は中国にあるとはいえ、企画コンセプトやソフトウエア開発、マーケティング等の高付加価値機能の大半は米国にあるままだ。もちろん、メイドインアメリカの商品が増えることは、心情的に素晴らしいことかもしれない。ただし、その効果がトランプ氏のいう通りかは分からない。

ブラックジョークか悪夢か

 しかし、だ。こうやって真面目にトランプ氏の議論を追いかけることが、実際にトランプ氏の思いに乗っているのかもしれない。

 イスラム教徒を批判しながら、トランプ氏はドバイにトランプ・インターナショナル・ホテル&タワー・ドバイを持っている。不法移民を批判しながら、一部のネガティブキャンペーンでは、自身のホテルで不法移民を雇用していると伝えられている。

 だからiPhoneについても、と思っていたら、やっぱり調べている人がいた。トランプ氏は、ツイッターで韓国サムスン電子製のAndroid端末とiPhoneの両方を持っているとし、そしてサムスン製を使うと発表した。それはアップルがテロリストの情報を当局に与えなかった姿勢とも関係していた。実際に、数日はサムスンを使ってツイッターをつぶやいていたようだが、その後は、使いにくかったのかどうかは分からないが、再びiPhoneを使っているようだ。

 おそらく、先ほどの文章の文末には「(笑)」と挿入すべきだったのかもしれない。もちろんつぶやきは付き人が行なった可能性はあるが、ボスの不買運動が身近な人にすら浸透しなかった証左ではあるだろう。

 ただこれに懲りず、トランプ氏はメイシーズ、アップルの次は、ワシントン・ポストの買収は税金逃れのためだったとして、アマゾンも批判する構えだ。私たちはただ単に面白いオヤジがいる、と見るべきなのか。本気、と見るべきなのか。

 そして、トランプ氏が大統領に選ばれる可能性があるというのは、ブラックジョークなのだろうか。それとも、悪夢なのだろうか。