国内でも発生

 ある自動車メーカーが、作業員確保を目的に、不法滞在の外国人労働者を不当に安い賃金で雇用しているとの報道があった。実際は自動車メーカーに部品を納入するサプライヤーと従業員の問題だった。直接的な雇用関係はなく、系列サプライヤーが契約していた人材派遣会社が雇用主であった。報道を受けた自動車メーカーは「系列サプライヤーと取引する労働者派遣業者を直接監視する立場にはない」とコメントを発表。確かにその通りなのだが、当事者であるかのごとく巻きこまれる事態を全く想定しておらず、発表したコメントも不用意な内容だった。

 しかしその自動車メーカーの米国法人のコメントは明らかに違っていた。「社内であれサプライチェーン内であれ、いかなるレベルの従業員の搾取も容認しない。すべての従業員が、尊厳と敬意を持って公平に扱われ、労働環境の適切な安全対策を講じられることを目指す」と発表したのである。

 このコメントで注目すべき点は、日本国内で発生した労働者の問題に、全く当事者ではない米国法人が積極的にコメントを発表した点である。本社の無知を、子会社が救ったといえる。この報道は英国系の通信社によるものが発端であり、ホームページには英文でも記事が掲載されていた。英語圏である北米でのブランドイメージの毀損(きそん)防止に配慮した対応である。

「もし事実だったら」と想定する

 なぜ日本企業の多くが「関係ない」と判断してしまうのか。直接的な契約や雇用の関係がなければ、当事者としての意識が生まれづらい。加えて、自社が管理・監督する範囲内ではコンプライアンスも徹底している「自負」によって、毅然として「関係ない」と判断し、発表してしまうのだ。しかし、当事者かどうか、あるいは当事者との関係の有無を判断するのは、自社ではない。ましてサプライヤーでもない。世間であり、消費者が形成する世論であると改めて認識する必要があるだろう。

 紹介した事例は、あくまでも疑いに過ぎず、報道された内容もすべて事実ではなかった。しかし、調査した結果事実だった場合は、サプライヤーの問題だからと見過ごせる話ではなくなってしまう。「関係ない」ではなく、「もし本当だったら、事実だったらどうするのか」と考えなければならないのだ。