一方、国土交通省が発表する「宅配便取扱実績」では、2015年度の取り扱い個数が10年前の2005年度と比較して約30%も増加した。物流業者が扱う貨物は小口化が進んでいるのだ。これは、日常生活を支えるコンビニエンスストアや製造業で進む多頻度配送、そしてインターネットによる通信販売の増加も大きく関係している。企業も人も、欲しいときに、欲しいモノを、欲しい数量だけ届けてほしいニーズが、このような結果を生んでいる。トヨタ自動車のみならず国民全体がJust In Timeを望んでいるのだ。

 Just In Timeは、在庫用の「スペース」や在庫購入に必要な「運転資金」の削減を可能にし、企業の生産効率を高める有効な手段と捉えられてきた。その利便性は、自動車産業のみならず、コンビニエンスストアや通信販売業者にまで広がり、最終的には消費者がメリットを享受している。1時間以内に注文した商品を届ける「アマゾン プライム ナウ」といったサービスは、消費者の待ち時間を、日単位から時間、分単位へと短縮化を進めている。

 しかし消費者が受けるメリットの裏側では、限られた人数のドライバーが長い労働時間を強いられている。働き方改革の実現には、便利さを維持するために一部の過剰な負担を分散しなければならない。政府の働き方改革による各企業における取り組みの結果、企業経営者にも労働者にも、そして両者は消費者となったときにも許容できる、代替手段によるサプライチェーンの維持を模索しなければならないのだ。

すべての当事者の負担が必要

 まず「荷主」を考えてみる。そもそもなぜトラック輸送に頼るのか。自社が行っている輸送の全容と、輸送に関係している構成要素をすべて明らかにしなければならない。その上で代替できる方法がないのかを探し検討する。

 トラック以外の輸送手段は、より時間的な制約、特に集荷時間の順守が必要だ。荷受人までの輸送をトラックで行う場合は、ドライバーに「ごめん、10分待って」で済む話が、例えば、時間に正確な運行をPRするJR貨物の場合「少し待って」が許容されない可能性が高い。遅れてしまったら次の輸送機会まで待つ必要がでてくるだろう。製造業の場合、人手不足に強い輸送手段の確保は、生産管理能力がおおいに関係してくる。時間管理に厳格なサービスを利用するには、まず自社の時間管理能力の向上が必要なのだ。

 次に「物流業者」を考えてみる。ドライバーが不足する中、働き方改革で総労働時間に上限が設けられた場合、顧客ニーズに応えられないケースが出てくるだろう。労働時間の上限規制は厳しい管理が求められ、「ヤミ残業」といった手段は、荷主と物流業者の双方が実行を禁じなければならない。荷主と物流業者はまず人の手しかできない業務を特定する。拠点間を結ぶ輸送業務の中でも定型的な業務は、鉄道輸送を活用したり、今後開発が進む自動運転車を採用したり、新しいテクノロジーを使用したりする仕組みの確立が不可欠だ。

 アサヒとキリンが共同配送を始めたような、同業者との協業によって効率性を高める手段もある。また、自動運転車や荷役作業の自動化の実現には、業界の枠組みを超えた協力関係の構築が必要だ。人手不足は人力の介在を無くすのがもっとも効果的な解決策になる。それでも貨物の駅や物流拠点から配送先までのラストワンマイルをどのようにするか課題は残る。ラストワンマイルの確保と、働き方改革を実現する効率性の向上にはさらに荷受者との協力が必要だ。

 企業や消費者は、働き方改革が発端といっても、発送側と物流業者の都合で、サービス内容の低下を受け入れるのは難しいだろう。しかし現状を維持するためには、仕組みの変更が必要であり、変更にはコストが発生するケースも想定される。現在集合住宅では導入が進んでいる宅配ボックスを、最寄り駅やコンビニエンスストア、郵便局といった拠点に拡大する動きを加速して、受け取り可能な場所を拡大し時間の制約を緩める。あるいは料金プランのメニューを拡大して、荷物発送時の持ち込みで適用される割引を、物流業者拠点、街中のボックスの受け取りにも適用して、メリットと一緒に荷受人のラストワンマイルの選択肢を拡大するのも一案だ。

 働き方改革を実現するためには、サプライチェーンの当事者の全員参加が必要だ。便利で快適な生活を維持するためには、各個人にまでおよんでいるサプライチェーンを維持する方法を編み出し、すべての当事者が相応の負担をする必要があるのだ。