現在、「働き方改革」による制度面での検討内容が明らかになりつつある。人口減少に伴い働き手が少なくなる中で、我々がどのようにこの働き方改革に対処していくのか。どんな職業であっても喫緊かつ極めて重要な課題である。今回は働き方改革がサプライチェーンにどのような影響をおよぼすのかを考えてみたい。

ドライバー不足を追い風にするJR貨物

 2月15日、JR貨物が2017年3月期決算で、同社の鉄道事業が初めて黒字化する見通しであることを発表した。トラック輸送が直面しているドライバー不足を追い風に、業績が拡大した結果だ。トヨタ自動車が自動車部品を輸送する専用列車を増便させたり、市場では熾烈なシェア争いを繰りひろげるアサヒビールとキリンビールが鉄道貨物による共同輸送を始めたりしている。JR貨物は、各地で企業や自治体担当者向けに鉄道輸送の利用促進PRを行っており、業績拡大に向けて鼻息は荒い。

 2014年4月、消費税率が5%から8%に上がる直前、いわゆる駆け込み需要の拡大によって、多くの業界がトラックが足りずに輸送力不足に悩まされた。近年では年末の繁忙期には、やはりトラックが足りずに期日通りに荷物が届かないといった話が伝えられる。ドライバーの残業時間に上限を設け、実質的に総労働時間を規制するような取り組みは、更なる輸送力不足に拍車をかける可能性が高い。ドライバー不足を回避するために、輸送の一部を鉄道貨物で代替するモーダルシフトが、JR貨物には追い風となっている。

鉄道輸送の問題点

 貨物列車は一度に大量の貨物の輸送が可能だ。最大で10トントラック65台分の貨物を一度に輸送できる。しかし、このメリットも物流の現場ではデメリットに変わる場合がある。同じ貨物を65台のトラックを使って運べば、余計な積み降ろし無しに、届け先に直接、あるいは最終向け地に近い拠点まで輸送できる。しかし鉄道の場合、沖縄を除く全国129カ所の駅と駅の間しか輸送できない。物流業界では大きな課題になっているラストワンマイルが、荷受け側だけでなく荷送り側にも発生する。仕向け地に直行できるトラックであれば1回で済む荷物の積み降ろし作業が、合わせて3回になる。また全国の駅で扱える貨車(コンテナ)の種類も大きく異なるため、最寄りの駅でどんな貨車で運ばれるかは、活用できるかどうかのポイントになる。

 しかし、鉄道輸送がそういったトラック輸送と比較した制約要因をクリアできれば、一転して輸送能力を確保するためには大きな武器になる。大手企業が鉄道輸送に踏みきる背景には、将来を見据えて輸送能力を確保する狙いがある。

 一度に少ない人員で大量の輸送ができるのは、大量の物資輸送が必要な大都市間や、生産地と消費地の間では有効な輸送手段となる。しかし、人口減少に直面する日本では、人口の少ない地域へどうやって物流網を確保するかが大きな課題だ。現在JR貨物は、各地域のJR旅客各社から線路を借りて貨物列車を運行している。ただし、東日本や東海、西日本のような大都市圏を抱えるJRと他のJRでは、鉄道路線網の維持に対する考え方の違いが明確だ。

 JR北海道では昨年11月、営業路線の約半分に当たる10路線13線区(合計1237.2キロメートル)を維持が困難と公表した。日常生活を支えるインフラを「維持困難」とするショッキングな発表は、道内の自治体だけではなく、JRで農産物を輸送する事業者にも波紋を広げている。このようにトラックのドライバー不足による輸送能力不足を、鉄道で代替するといった考え方は、全国で画一的に適用できない。地域の実状に合わせてオーダーメイド的な解決策を見いださなければならない。

一億総「Just In Time」化した日本

 加えて、現在のドライバー不足問題は、国内の総輸送量が減少する過程で発生している。日通総研が発表する「2016年度の経済と貨物輸送の見通し」を参照すると、2015年度の国内貨物総輸送量は、前年度対比0.6%マイナスと減少している。2008年のリーマンショックで大きく落ちこんだ総輸送量は、その後もジリジリと減少を続けている。