先日ロイターが報じたところによると、米ボーイングが3Dプリンターを大胆に導入する。その用途は宇宙タクシー用のものだ。宇宙タクシーとは、かつて同社が米航空宇宙局(NASA)と契約を結んだもので、国際宇宙ステーションに乗組員を送る。
さすがに宇宙タクシーに3Dプリンター製品が使われる、というのには驚く。しかしこれは、3Dプリンターが単に試作用途だった頃から、弱電などの最終製品生産用途への移行を経て、重要機器用途にまで発展したことを意味する。
かなり過酷な環境でも3Dプリンターで生産した樹脂部品が実用に耐えうる、とした前述の記事では、さらに「NASAやボーイングにとって、本当に価値があるのは、強度がアルミぐらい強くて、さらに軽いことだ(What really makes it valuable to NASA and Boeing is this material is as strong as aluminum at significantly less weight)」と関係者のインタビューを載せている。
その樹脂材料はPEKK(Poly Ether Ketone Ketone)と呼ばれるもので、高剛性や高強度で知られる。旭化成のレポートに詳しい。こういった高性能樹脂をも3Dプリンターが扱うようになった。
特に少量の場合は、3Dプリンターで生産したほうが早くて安く済む。自動車産業ならばまだしも、宇宙産業のような個数であれば3Dプリンターが使えるなら使うにかぎる。実際に、3Dプリンターの売上高の17%を宇宙産業用途が占めるという。
3Dプリンターが変える業務
3Dプリンターは1980年代に生まれたが、2000年代以降の発展には目を見張るものがある。米ローカルモーターズは「LM3D」というページで、3Dプリンターで生産するクルマを公開している。YouTubeでも樹脂を積層しながらクルマを作る様子が公開されているので、見てみると面白い。
これまで製造業の生産担当者や調達担当者は、「どこかこの部品を生産してくれるところがないか」とサプライヤーを探していた。しかし、これからは、同じくサプライヤーでも、「3Dプリンターを持っているところはないか」と探すかもしれない。
仏Sculpteoは工業用3Dプリンティングのサービスをはじめたが、同社では50もの材質を扱い、しかもたった2日で届ける迅速ぶりだ。
樹脂部品を作るための金型などを扱った経験のある人であればわかるだろうが、金型成形の場合、タイ焼きのように金型がメス側とオス側にわかれていてデザインの制約を受ける(だから抜き勾配が必要になる)。しかし3Dプリンターであれば、さまざまなデザインが可能だ。
同社は、単なる試作用途として3Dプリンターを使うのではなく、デザインの自由さを発揮するために3Dプリンターが有効だという点をアピールしている。
3Dプリンターが変えるサプライチェーン
ところで話が飛ぶようだが、2017年に下請法の運用ルールが変わる。下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは、中小事業者の取引条件の改善を図るためのものと考えてほしい。
具体的な内容は調べていただくとして、ここでは中小事業者の保護を目的にさまざまな義務を親事業者に課し、禁止事項も定めているといった程度でとどめておく。
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