なお、ここではご丁寧に、もう一つの調査も行っている。営業利益の伸びや、従業員の伸びは、EMS活用によるものではなく、単に好調ゆえではないか、という疑問に対するものだ。そこで、もともと営業利益が増加傾向にある企業のみを抽出して、従業員の伸びを質問している。

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 ここでも同様に、やはりEMS利用が増えるほど、従業員数が増えている。

 といった様子で、EMSを使う側にも、十分なメリットがあった。EMS企業が肥大化するのは、歴史の必然だった。

 さらに垂直統合から水平分業へという流れもあった。説明は不要だろうが、垂直統合は製品の開発から生産、販売までを自社あるいは自社グループ間で一手に担うもの。水平分業は、各プロセスを切り分け、都度、最適な取引先へ委託するものだ。水平分業のように、製品をモジュール化し、最適な組み合わせを模索する開発のありかたが時代にマッチした。各社は自社組織を効率化し、生産についてはEMSを活用“せざるをえなくなった”側面もある。

鴻海はシャープをどう活用するのか

 鴻海はシャープの技術力を手に入れる。それは、シャープのデバイス技術、そしてディスプレー技術を手に入れることだ。そうすれば、鴻海としてみれば、電子機器の開発から生産、販売までを一気に手に入れることになる。さらに鴻海は相当量の電子デバイスを調達しているため、コスト安を実現できるだろう。これはシャープにとってもメリットだ。なによりアセンブリコストも低い。

 さらに、シャープのイグゾーは先端の技術が詰まっている。すごすぎて使えない、と揶揄されたこともあったが、鴻海とのタッグによってさらに飛躍することを私は望む。イグゾーは、低消費電力で感度センサーに優れ、細かな映像再現性をもつ。スマホ以外の分野でも活用の余地は大いにある。

 さらにシャープのディスプレー事業は、コンシューマー用だけではなく、IA(産業機械)向けにも強みを発揮する。液晶の動作温度範囲も広い。さらに、車載用液晶における、耐衝撃性、耐振動性は1日の長が認められる。もし鴻海が電気自動車事業などに進出し、完成車を生産することになったら、思わぬシナジー効果を生み出すだろう。

 ところで、私が思うのは歴史の必然と、そして私が注視したいのは歴史の行く末である。鴻海のようなEMS企業が、時代の潮流にのって肥大化し、シャープを買収するにいたった。なるほど、それが時代の必然かもしれない。しかし、生産委託を請け負って成長したはずの鴻海が、気づいたら生産だけではなく、開発・生産・販売・アフターフォローまでの全プロセスを担う企業体となっている皮肉である。

 垂直統合が時代遅れだったはずなのに、最先端の水平分業が一周して、垂直統合と同義になっている。この大きなパラドクスに気づいている人は、意外なほど少ない。

 鴻海とシャープがどうなるか、それは歴史的なメルクマールとなりうる。少なくとも私はそう理解しているのだ。