シャープと鴻海の歴史的逆転

 それにしても高い技術を有すシャープが、EMS企業から支援を受ける、というのは考えてみるに示唆深い。これは鴻海に技術力がない、といいたいわけではない。ただ、それでも、シャープはアセンブリ企業に買収されるのだ、という感が少なくとも私には拭えない。もちろん、この感覚自体が古いものであるには違いない。

 シャープは、スマホ液晶の需要が伸び悩んだ。加えて、テレビも呻吟(しんぎん)した。たった5年ほど前には、エコポイント制度の効果もあって2500万台を記録した薄型テレビの出荷台数は、500万台規模にまで萎んでいった。液晶メーカーの乱立は、液晶単価を引き下げ、そしてテレビのコモディティ化は関連企業の業績を悪化させた。

 もちろん液晶各社は、消費電力や画面精度などでアピールを続けたが、潮流を変えるまでには至らなかった。研究投資を莫大に注ぎ込んだ結果、それを回収することが難しくなった。

 各社ともに、製造コストの削減や設備投資に億劫になった。リスクヘッジからも、生産の解を外部委託に求めるようになった。そのメインキャラクターが、鴻海だった。わずか10年弱で売上高は15.7倍となった。他社も同様だ。クアンタ・コンピュータ(台湾)は9.1倍、フレクストロニクス(シンガポール)は2.2倍といった様子だ(「2013年版ものづくり白書」参照)。

魔法の杖としてのEMS活用

 しかも、EMSを使う企業側からも、その意義について認められている。2013年のデータで恐縮だが、以下のグラフはEMSを使う頻度と、営業利益の伸びを示したものだ(前述の「2013年版ものづくり白書」より著者作成)。

 横軸は、回答企業のうち、EMSの利用頻度にどう答えたか。そして縦軸は、その回答ごとに、利益が伸びたのかそれとも減少基調にあるかを示したものだ。

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 これを見ると、EMSを活用し、自ら生産を“捨てた”企業のほうが利益は伸びている。

 雇用はどうだろうか。これも以下のグラフの横軸、そして縦軸を同様に見ていただくと、EMSを活用している企業のほうが従業員数は増加傾向にある。皮肉ながら、生産を“捨てた”ほうが、結果として、全体の従業員数は伸びうると、このアンケートは語っている。

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