(写真:ロイター/アフロ)

 1月27日、米国のトランプ大統領は、企業や労働組合の代表合計28人で構成する「Manufacturing Jobs Initiative」(製造業雇用促進会)の創設を発表した。労働組合の代表3人と企業トップ25人で構成されるこの会で、どんな内容が討議され大統領へ答申されるのだろうか。

 この会では、トランプ大統領がこれまでに発言し、一部は大統領令によって示してきた米国製造業における雇用拡大の具体策が求められる。米国大手企業のトップが名を連ねる会で、どんな妙案が見いだされるのか。サプライチェーンのプロセスが海外へ流出する「産業の空洞化」が進む多くの日本企業でも、その結果は注目される。

オバマ前大統領も目指した製造業復権による経済活性化

 これまでに出された大統領令を見ると、トランプ大統領はオバマ前大統領の政策の多くを否定している。しかし製造業に対する政策はいみじくも重なる点が多い。2010年6月に競争力評議会(Council on Competitiveness)によって立ちあげられた「米国製造業イニチアチブ」でも同じような討議が行われた。当時、米国の輸出額の69%を製造業が占めており、輸出額を5倍に増やす目標が掲げられた。

 この取り組みが環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加へとつながってゆく。製造業の持つ経済への大きな波及効果がクローズアップされたのだ。製造業における研究開発費の大きさ(民間部門の約70%)やサービス業への波及を含めた乗数効果の影響力が大きく、そして過去20年の生産性向上の平均がサービス業の年率2.3%に対し製造業が3.4%と報告されたこともあり、製造業への期待がいやがおうにも高まった。

 期待の高まりは、2011年8月にボストンコンサルティンググループ(BCG)から発表されたレポート「Made in America, again」で最高潮を迎える。2011年から5年以内に米国市場向けの製品の多くが、中国で生産した場合とのコスト差がなくなるとしたレポートの内容は衝撃をもって迎えられた。

日本で行われた2つの国内生産回帰

 2017年現在、JETRO(日本貿易振興機構)の資料によれば米国と中国には引き続き歴然とした人件費差が存在する。BCGのレポートで人件費が米国と同じになるとされた中国揚子江デルタ地域を上海地域としても、もっとも差の小さいアトランタと比較して5.8倍もの開きがある。またATカーニーが発表している「U.S. Reshoring Index」を見ると、一時的に生産回帰されたとされる2011年以外は、海外への生産流失に全く歯止めがかかっていない。オバマ前大統領が掲げた、製造業を復活させ輸出を5倍に増やすといった目標は、残念ながら実現しなかったと結論付けざるを得ない。

 一方、日本と比較すると、2012年、安倍政権発足後に外国為替が円安傾向へと推移し、為替変動に呼応して多くの製造業で国内への生産回帰の動きが見られた。日本企業が取り組んだ生産回帰には大きく2つの方向性がある。

 1つは、国内と海外の工場の稼動率をコントロールして、為替レベルに呼応しコスト面で有利な工場の稼動率を高める方法だ。2012年にはパナソニックやソニーといった多くの国内製造業による取り組みが報じられた。将来的な円高局面への移行を想定すると、全面的な日本国内への生産回帰は決断できない。しかし目の前の円安による損益の悪化には何らかの対応が必要となった企業にとって、もっとも取り組みやすい方策だ。