(写真:ロイター/アフロ)
(写真:ロイター/アフロ)

 米国トランプ大統領が「メイド・イン・アメリカ」を叫んだとき、誰もが、オバマ元大統領の繰り返しか、悪い冗談だと思ったのではないか。なぜならば、オバマ元大統領も「バイ・アメリカン」を推進してきた。また、トランプ氏は「メイド・イン・アメリカ」を叫びながら、鴻海(ホンハイ)精密工業が中国で組み立てたiPhoneを愛用していた。

 以前、この連載でもとりあげたとおり、移民に否定的なトランプ氏に対して、各小売店の反応はイマイチだった。なぜなら、彼らの顧客の少なからぬ割合が、移民に関連する人たちである。小売店としてトランプ氏を支持すれば、顧客はいい気分にはならないだろうし、なおさらトランプ氏のアパレルブランドを置く気にはなれないだろう。

 実際に、米メイシーズはかつて、移民に否定的なトランプ氏を批判した。そして、トランプ氏のアパレルブランドのメンズウェア・コレクションを販売中止とした。トランプ氏が主張するかぎりは、「ビジネスを停止せざるをえない(we have decided to discontinue our business relationship)」と。

 その際に、トランプ氏はメイシーズに強烈な反論を重ねた。さらにはメイシーズの不買をも勧めた。ただ、トランプ氏自身が、移民を含む労働者を活用しながらビジネスを展開していたのも事実だ。さらに、「メイド・イン・アメリカ」と叫びながら、一方で、自分自身のブランドは「メイド・イン・チャイナ」が少なくなかった。

 だからトランプ氏は「自分自身のネクタイとシャツは中国製である」が、それについては、「喜ばしいと思ったことはない」と語った。

メイド・イン・アメリカは夢か

 ところで、「メイド・イン・アメリカ」「アメリカ・ファースト」と並んで有名になったフレーズに「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」がある。訳すまでもないものの、「アメリカをふたたび偉大にしよう」というものだ。

 確かに、いつの間にか最大の原油産出国の一つとなり、LNG(液化天然ガス)までも世界に輸出できるようになり、シリコンバレーもラストベルトをも抱え、3億を超す人口を誇る米国は、自国だけでなんでもできてしまうのかもしれない。

 しかし、「メイド・イン・アメリカ」「アメリカ・ファースト」「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」といいながら、その実態はどうか。ここからは、政治的なオピニオン抜きで、事実だけを列記してみたい。

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