
サプライチェーンは、さまざまな役割の構成要素によって成り立っている。同じ企業の中にあっても、サプライチェーンに関係している各部門の機能と責任は異なり、その調和がサプライチェーンの効率性に大きく関係している。
サプライチェーンの円滑な運営は、企業内だけではなく、異なる機能の企業が、同じ目的を達成するために調整を続ける事業運営が欠かせない。各企業の戦略と業務の双方に同期が必要だ。そして多くの業態では、商品提供を受ける消費者もサプライチェーンの一端を担う。いわゆるサプライチェーンの「ラストワンマイル」の部分だ。
経済産業省が昨年発表した平成28年の商業販売額は442兆円。うち、小売業が139兆円を占める。公益社団法人日本通信販売協会が昨年8月に発表した「通販市場売上高調査」によると、2016年の売上高は6.9兆円。この団体に加入していないアマゾン・ドット・コムの売り上げ1.1兆円を加えても8兆円。通信販売は小売業全体の1割に満たない。いまだ多くの消費者によってサプライチェーンが成り立っているとも言える。
そして、これらの数字からインターネットを活用した通信販売の市場は、まだまだ拡大する可能性がある。一方で消費者にサプライチェーンの一端を負担させる既存の小売業は、引き続き商業販売の中心を担うため実店舗での販売の拡大にしのぎを削っている。
コンビニを取り巻く厳しい経営環境
今や日本の小売業界の主役であるコンビニは、一店舗あたり2000人~3000人の商圏人口が必要といわれている。日本フランチャイズチェーン協会に加盟するコンビニ大手8社の店舗数合計は、2017年12月時点で5万5322店を数える。一方日本の人口は1億2659万人だ。単純計算で1店舗あたり2288人であり、店舗数は明らかに飽和状態だ。
厳しい経営環境の中、コンビニが成長を持続するには、魅力ある商品や店作りの取り組みが欠かせない。しかしコンビニの商品は、他のコンビニチェーンと比較した「優位性」を示すのが難しい。コンビニ各社は自社チェーンの店舗で販売される商品開発に取り組んでいる。しかしあるチェーンのヒット商品は、すぐに他のチェーンに模倣されてしまう。商品の魅力だけで、消費者を引きつけ続けるのが難しいのだ。
結果的によく訪れるコンビニは、自宅やオフィスの最寄りの店舗や、通勤通学途中にあるといった日常生活の「動線」上にある店舗が選択される。これまでは、できるだけ人通りの多い立地を選んだり、店舗形態を拡大し「駅ナカ」といった小規模スペースにも出店したり、できるだけ多くの消費者の「動線」のカバーが事業拡大戦略の中心だった。店舗数が明らかな飽和状態になった今、コンビニ業界は従来の戦略の転換に迫られている。
集客の決め手は、消費者に負担を強いるサプライチェーンのラストワンマイルだ。店舗数が飽和状態になった今、その名前の由来であるコンビニエンス=利便性を超え、消費者が店舗に足を運ぶ「理由付け」が必要だ。「ラストワンマイルを負担しても行きたい」と消費者が考える店舗作りが、これからのコンビニ業界の雌雄を決するのである。
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