生産が中止された電子部品の購入は、偽造品混入との戦いの最前線だ。電子部品だけではない。2007年には食肉加工卸会社による原材料の偽装が発覚した。2014年には、大手ホテルや有名百貨店で、実際の食材よりも良い食材を使っているメニューの虚偽表示が相次いで発覚した。

 今回発覚した問題よりも前に、さまざまな製品や業界で偽造品撲滅の取り組みは行われてきた。こういった問題への対処には、サプライチェーンのあらゆる場面で、偽造品を混入させない取り組みが必要だ。特に医薬品は正規品の流通によって患者の生命を守る。何よりも優先順位は高いはずだ。

医薬品物流の最新事情と想定される原因

 問題となった医薬品の場合、従来は医薬品メーカー系列の卸会社を経由し医療機関や調剤薬局へ届けられていた。現在医薬品卸業界では再編が進んでおり、いわゆる製薬会社の「系列」といった形で卸会社の区別がしづらくなっている。偽造品が見つかった今回の薬品も、大手卸会社2社から供給が可能だと言われている。業界内の集約が進んだ結果、どこの卸会社からでも供給可能な医薬品が増えている。どこからでも買えるようになるのは医療機関や調剤薬局にとって、より購入条件の良い卸会社を選択できる余地が広がり、消費者として歓迎すべき動きである。しかしメリットには、必ずデメリットが存在する。

 事件を報じる記事では「偽造品は正規の取引先以外の経路から入手された」と伝えていた。この「正規」は、どのような根拠によって「正規」と認定されるのだろうか。メーカー系列による供給品の違いが薄くなっている現在、「正規」であるかどうかの確認をどのように行うかが大きな課題である。薬局側からみて、どこの卸会社だったら正規の商品供給が可能だと判断する分かりやすい情報は流通していたのだろうか。医薬品の場合、ジェネリックを選択するかどうかを除けば、供給してほしい商品は極めて明確だ。明確な要求に正しく応える仕組みを構築しなければならない。これはサプライチェーン全体で分担して実現しなければならない。

 もう一つ、考慮すべき点がある。そもそも医薬品は生命を守る性格上欠品が許されない。これまで医薬品メーカーと卸会社は、安定供給の維持に多大な努力をしてきたはずだ。しかし「ハーボニー配合錠」の高い薬価が原因で、薬局によっては十分な在庫を確保できない可能性もあるだろう。薬局では需要が確認された時点で、在庫のある卸会社を探していたかもしれない。誰もまさか偽造品が流通しているとは思わず、入手したものを患者へ処方する。この問題は、どの卸会社から仕入れても同じ商品である前提で、医療機関や調剤薬局が提供してきた医薬品に対する信頼を揺るがす事態だ。

 従来は、医薬品卸会社の営業拠点からの配送が中心であった。しかし、卸会社の規模拡大によって、医薬品卸会社自身で物流機能の高度化に取り組んだり、物流専業会社に配送を委託したりといった取り組みが進んでいる。いうなれば、販売と配送の分業化が進んでいるのだ。

 今回奈良県で発生した偽造品5個のうち、4個は正規ボトルで、1個は類似したラベルがボトルに貼られていた。正規品が流通するサプライチェーンのどこかで、正規品ボトルに偽造品が混入し、加えて類似したボトルに偽造品が混入した可能性が高い。

 物流機能の進化は、各工程の集中化と専業化によって実現する。営業パーソンが在庫を管理し、注文内容と数量を確認して、顧客へ配送していたときと比較すれば、介在する人の数が多くなる。もちろん医薬品卸会社の物流部門も、物流専業会社でも、配送品の安全管理は行っていたはずだ。現時点で、偽造品がサプライチェーンのどの工程で混入したのかはわかっていない。しかし「正規取引先以外の経路」というからには、医薬品メーカーを出荷して患者の手にわたるまでの流通段階で混入された可能性が高い。高額な医薬品だからこそ、偽造品によって法外な利益を生む可能性も生まれる。

 サプライチェーンにおける管理がずさんであれば、今回発見された偽造品以外でも、同様のケースがないとは言いきれない。現在、他の薬局でも同様の事案がないか調査が進んでいると報じられている。医薬品のサプライチェーンの信頼回復には、他の医薬品で同じような事例がないかも調査すべきだろう。「他にはなかった」という報告で安心したいのは、国民全体の気持ちであるはずなのだ。