1月17日、厚生労働省はC型肝炎治療薬の「ハーボニー配合錠」の偽造品が、奈良県内の薬局チェーン店で見つつかり、医療機関や販売業者に注意喚起を行った。さらに23日、東京都内の卸売販売業者でも新たに偽造品が見つかったと発表した。

 「ハーボニー配合錠」は、1錠5万5千円。2015年の発売から7カ月で2693億円を売りあげた薬品だ。治療には1日1錠で12週間の服用が必要となる。これまでの発表では、奈良県内の同じ系列の3店舗から偽造品が合計5個見つかり、東京の卸売販売業者から9個見つかっている。そして発見された偽造品の入手先について「正規の取引先以外の経路から入手された」としている。

 医薬品の偽造品自体は余りめずらしい話ではない。もっとも有名な偽造医薬品はED治療薬である「バイアグラ」だろう。偽造品を注意喚起するホームページでは、インターネットで入手できる製品の多くが偽造品と断定されている。

 素人である患者にとって、薬は外観で正偽を判断することは難しい。これまで多くの患者は医療機関か調剤薬局こそ信頼できる供給元として疑いなく薬を受け取り服用していたはずだ。医薬品サプライチェーンの信頼を大きく裏切る偽造品の混入が発覚したのである。いまだ原因究明の報はない。徹底的な調査と再発防止の取り組みが不可欠である。

あってはならない事態!対応を急げ!

 医薬品は多くの市民の生命を守る重要な役割を担っている。誤った製品を供給すると、最悪の場合人命に被害がおよぶ可能性がある。製薬会社から医薬品卸会社、医療機関や調剤薬局、そして患者へとつながるサプライチェーンも厳格に管理されてきたはずだ。

 日本保険薬局協会の中村勝会長は19日に行われた理事会後の会見で、今回の事態は正規の医薬品卸ルートでは起こらない「特例中の特例」との見方を示した。いやその通りだろう。インターネットによる通信販売業者が扱っていた製品で発見される偽造品とは訳が違う。医療機関を受診し処方された薬が偽物だった今回の事件は、医薬品のサプライチェーンに「偽造品撲滅」の新たな課題を突きつけているのだ。

偽造品と戦ってきた各業界

 サプライチェーンにおける偽造品との戦いは、医薬品に限った話ではない。2012年にアメリカ上院軍事委員会で発表された「INQUIRY INTO COUNTERFEIT ELECTRONIC PARTS IN THE DEPARTMENT OF DEFENSE SUPPLY CHAIN」と題されたレポートがある。2009年から2年間に渡って国防総省へ供給された兵器を対象にした調査で、合計1800件にもおよぶ偽造電子部品が発見され、部品個数でいうと100万個以上だったと報告されている。

 この偽造品の件数と数量に驚きを感じるだろうか。ふだん電子部品を購買していたら、余り驚かないかもしれない。電子部品のライフサイクルと、電子部品で構成される製品のライフサイクルにミスマッチが起これば、例えば製品のライフサイクルの方が長ければ正規の電子部品メーカー以外からの購入を強いられる。直接仕入れたというエビデンスをもつ一次卸にも在庫がなくなれば、二次卸から三次卸へと市中在庫から購入せざるを得なくなる。

 メーカーから遠くなればなるほどに、生産後に時間が経過すればするほどに、意図的かどうかにかかわらず物理的に別製品混入の可能性が高まる。正規品を示すエビデンスがあっても、在庫された場所が変わったり、こん包が開けられていたりすると、果たしてエビデンスの記載内容と実在するモノが結び付いているのかどうかの疑念が生まれる。