
情報番組のコメンテーターを務めるようになってから気づいた、番組素材の変化といえば、車中、特にタクシーのドライブレコーダー画像が頻繁に使われる点だ。強盗や窃盗など、内部の様子を見るだけではなく、運転時の外部の画像を見る機会も増えた。
クルマの数だけ監視カメラが増える。それが犯罪の捜査などで重宝されているのもよくわかる。もちろんドライブレコーダーは、それだけ監視の目が増えていることでもあるため、その是非は問わない。ただ、多くのクルマが意図せず事故の目撃者となることは興味深い。
UPS運転手が救世主となる日
現在、ECサイトの発展もあり、さまざまな場面で配送業者の活躍を見る。人材不足が深刻であり、その根本解決にはいたっていない。現場では、人材不足に加え、高齢化と、その多忙ぶりに悲鳴があがっている。本稿ではその点は繰り返さず、その多忙ゆえの新たな取り組みについて述べる。
それは米UPSの取り組みだ。UPSはいわずとしれた運送業者で、米国のみならず全世界から荷物を受け、配送する。当然ながら、UPSのドライバーは他の職業人にくらべて、すみずみまで移動する。そこでUPSは、仕事をしているドライバーが、人身売買等の犯罪行為が行われている様子を察知した際には、報告することにしたのだ。
人身売買等がどういった状況で起きやすいのか。その判断を行うために、同社の8000人を超えるという、ドライバーへの教育も行う。UPSは、自社について「売買犯罪者と被害者を救う、きわめてユニークなポジションにいる(a unique position to help identify traffickers and trafficking victims)」と語っている。
配達時にもたらされる多くの情報
配送業者は、もちろん芸能人宅にも荷物を運ぶだろうし、他の有名人宅にも荷物を運ぶ。そのような人たちのプライバシー情報を漏洩させるのはもちろんご法度だ。ただし、このような状況ならばどうだろうか。
- 荷物を渡しにいったら、ビクビク怯えている。とても特異な動作をしている
- なぜか大泣きしている
- 助けてほしいような表情をしている
- 荷物の宛名の人物を知らない
- なにか病的な行動を取っている
このなかには、「主観だろう」としか思えないものもある。判断基準が難しい。日本では、これらの状況を通報すれば、プライバイシー侵害として感じられるかもしれない。だからこそ、それを見抜くためのドライバー教育なのだろう。
ただ、ドアまで荷物を運び、サインをもらうドライバーは、たしかにポストに手紙を入れるだけではない、ある種の「雰囲気」を感じるはずだ。もちろんなかには、人身売買等とは全く関係のない宅が報告されるかもしれない。ただ、同社の取り組みは意義があると私は感じる。
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