大きな課題となる統治

 最後に統治(Governance)。日本企業にとっては、これが一番大きな問題だ。2017年は「持続可能性に配慮した調達」に関する国際規格(ISO20400)が発行される。この規格は、あらゆる企業が行っている調達に関して、環境と社会に対して「どのように配慮を行うか」を定めている。いまのところ認証規格ではなく「手引」の位置付けになる見通しだ。現時点では、昨年2月に作業部会から提示されたドラフト版(英語版)のみPDFか文書で入手可能となっている(有料)。

 この「手引」の位置付けは、ISO26000(社会的責任に関する手引)の調達・購買部門版だ。扱われている内容は、主に次の通りとなっている。

  • 労働問題
  • 人権問題
  • 贈賄問題
  • 有害な化学物質の使用
  • 河川・地下水の汚染
  • 水資源の浪費

 このように非常に広範囲にわたって「事前配慮」が必要となる。先に述べた「働き方改革」は、労働問題であり人権問題にも深く関係する。下請代金遅延等防止法の「振興基準の改正」もISO20400の考え方とつながりをもっている。2020年東京オリンピック・パラリンピックでも、競技大会組織委員会から「持続可能性に配慮した調達コード基本原則」が公表されている。統治(Governance)の観点で、「持続可能性に配慮した調達」の概要を理解するには格好の資料となっている。2017年の年頭にあたって一読をお勧めする。

調達部門から発信する国際規格対応

 国際規格は、例えばISO9000シリーズだったら品質保証部門、ISO26000シリーズだったらCSR部門といった形で、各担当部門が社内の取りまとめを行うケースが多いはずだ。ISO20400は、「調達」に関する規格だから、調達部門が中心となる。ISO26000との兼ね合いでは、CSR管理部門との連携が必要となってくるだろう。これまで国際規格への取り組みでは関連部門からの依頼を受ける立場に終始していた調達部門から、各部門への発信が必要だ。

 今回のタイミングを調達・購買部門は積極的に利用しなければならない。規格の内容を率先して理解して、管理規定に盛り込んだり、必要な業務プロセス変更したりといった取り組みを行うべきだ。これまでの業務プロセスと比較すれば、プラスされる内容もあるだろう。しかし「なぜ、行わなければならないのか」といった点では、疑問をはさむ余地はない。政府の取り組みや、東京オリンピックを絡めて、持続可能性に配慮した調達の実現は、自社とサプライヤー、サプライチェーン上の誰もが関与して実現しなければならない課題なのだ。

サプライチェーンに求められる説明責任

 ISO20400では、経営者と調達・購買部門における役割を明確にして、それぞれに説明責任を求めている。「持続可能性」に関連した対象がどんどん広がっている。企業が「社会の公器」であると前提すれば、企業行動によってそれだけ社会全体に与える影響の大きさの裏返しと理解しなければならない。

 果たしてどれから手をつけるのかと途方に暮れるかもしれない。先進的な企業はどんどん「見切り発車」的に取り組んでいる。ユニクロを運営するファーストリテイリングでは、欧米の同業他社の対応を重視して、サプライヤーリストの公開を決断した。従来サプライヤー情報は機密事項と考えていた日本企業は多いはずだ。しかし、技術情報の流出といった公開にともなって発生するリスクよりも、サプライヤーにおける労働環境まで管理する姿勢を市場は評価し、メリットがあると判断したのだ。

 サプライチェーンは、自社だけではなく、サプライヤーから顧客まで含めた全体の管理が必要だ。ただサプライチェーンを断絶させずに、自社の利益確保を目指した管理では、顧客からも株主からもダメ出しをされる時代なのだ。