「何かを生み出そうという思いは微塵もない」

川島:葛西さん、「デザイン」という言葉を定義すると、どういうことになりますか。

葛西:一言で言えば「ととのえる」ことかなと思ってます。「ととのえる」というのは、整理の「整」であり、調和の「調」。双方の意味を含んでいる。ゼロから何かを編み出すというより、さまざまな要素を整理整頓、再構成して、スムースに事が運ぶようにするとか使いやすくする。それがデザインの意味するところだと思うのです。

川島:デザインは必ずしもゼロから作るものではなく、あるものを「ととのえる」こと。

葛西:新しい仕事が来た時に、必ずしも新しいものを生み出そうという思いはありません。まず、何を整理整頓しようか、ということが頭に浮かぶ。全体の要素を並べてみて、これは必要、これは必要でないと選り分け、残ったものを改めてかたちにしてみる。そうやって吟味して整理整頓していくうちに、やっぱり新しいものが必要な場合もある。その時はじめて、ゼロから作ることはあります。

 ただクライアントの多くは、新しいことをやりたい。でも実は、既に素晴らしいものを持っているのに、それに気づかず、ついつい外を見てしまう。「ゼロから作る、新しくっていいデザイン」なんて浮かばないんですよ(笑)。

川島:自分で答えを持っていない時に限って、クライアントは、「何か新しいもの」「何かインパクトのあるもの」を出してください、というんです。どうするんですか?

葛西:できるだけ質問をします。「そもそも問題は何ですか?」「結果的にどうなりたいのですか?」という具合に。クライアントから本音や本心が出てくると、こっちもどんどんアイデアが湧いてくるようになる。

川島:ところで葛西さんは、どうやってお仕事を獲得してきたんですか? 一般に広告の仕事は、クライアントの依頼に対し、何社かがプレゼンテーションして1社が選ばれる競合プレゼンテーションが多いですよね。

葛西:実は僕、競合プレゼンテーションに弱いんですよ。昔からよく負けています(笑)。競合の場合、他チームに勝つためには、瞬間的な爆発力とか、圧倒的なインパクトが求められる。だけど弱かろうと、どうしても自分が信じる表現に向かってしまう。そもそも、競合プレゼンテーションという形式自体を疑ってます。

川島:そううかがうと、競合プレゼンという方法そのものが、「よい広告」をつくるためには必ずしも適していない? じゃあ、「よい広告」ってなんでしょう?

葛西:また難しい質問を(笑)。

*11月30日公開「よい広告とは「風の吹いているおじさん」です。」に続く