「たった一枚の絵の力で、一気に天窓が開いた」

葛西:1人のデザイナーが救ってくれました。仲條正義さんです。

川島:仲條さんと言えば、「資生堂パーラー」のパッケージをはじめ、チャーミングで斬新なデザインをなさる方ですね。

葛西:ええ。客層は若い人がほとんどだからこそ、大先輩の仲條さんに、お店の壁面のアートワークをお願いしました。「虎を自由に書いてください」と。そして、工程上ぎりぎりのタイミングで、仲條さんから草案が上がってきて、絵を見た瞬間、「わーっ」と大歓声。その瞬間からみんなのスイッチが入って、商品のデザインから何からプロジェクトが一気に転がり始め、無事オープンすることができました。

川島:すごい! 一体、何の力が働いたのでしょうか。

葛西:絵の力ですよね。たった一枚の。仲條さんにしかない前衛と言ったら良いのか、どこの国の人でもこれを見たら、心が緩む。どこか別世界へ連れていってくれる…。かたちになったもの=デザインに実際に触れることで、みんなの心が動いて課題の解決方法が見えたんですね。

 頭で考えているだけだと、煮詰まって同じところをぐるぐる回っちゃう。そこに、言葉や論理を超えたデザインという解が示されることで、一気に天窓が開いた。そんな感じです。

川島:論理より、感覚が大切?

葛西:そうでもないんです。先にみんなで徹底的に議論して論理的に詰めていくプロセスがあったのがよかったんです。論理を視覚化するにはどうすればいいのか、というところで止まっていたところに、仲條さんがデザインでヒントを出してくれた。「そうそう、これだ!」とみんな気がついた。感覚的な表現を作り上げるまでのプロセスに、論理の積み重ねは欠かせないと思います。

川島:私も似たような経験があります。ある商品の企画会議が煮詰まっていた時に、デザイナーが「この商品のイメージポスターを作ってみました」と、いきなり紙を広げたのです。そしたら皆が一斉に見入って「これこれ!」となり、その商品の方向がびしっと決まっていって「凄いなぁ、デザインの力って」と思ったものです。

葛西:それも結局、みんなで考え抜いた結果として感覚に訴えるデザインが出てきた、という風に考えた方がいいでしょうね。

川島:広告にしろ商品づくりにしろ、論理を突き詰め、感覚に訴えるものなんですね。

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