デザイン会社の新機軸とは?

佐藤:ここ数年で、僕はデザイナーの役割が、今までと異なるところに来ていると変化を感じています。それによって、デザイン事務所の組織も変化する必要が出てきています。

川島:どういった次元なんでしょうか。

佐藤:クライアントとデザイナーが、それぞれ人材を出し合い、組織を作って新しいビジネスを生み出していく。そういった試みがあってもいいのでは、と考えています。たとえば、新しいプロジェクトが始まる時に、クライアント企業のデザイナーとネンドのデザイナーが、同じオフィスに席を置いて一緒に仕事する。そうすることで、お互いが持っているノウハウを出し合って、触発したりされたりといったことが起きてくるはずです。

川島:面白い試みですが、どんなきっかけから、そこに可能性を感じたのですか?

佐藤:クライアントの仕事に、僕らがかかわっている間はいいのですが、プロジェクトが終了して離れてしまうと、デザインの考え方が継承されていなかったがために、結果的にプロジェクトがうまく行かない。そういうケースがいくつかあったんです。とても、もったいないと感じていて、どうしたらこの問題を解決できるだろうって考えていった結果、クライアント企業のデザイナーの方々が、デザインやブランドの本来的な価値を理解して、かたちにしていってくれることだと思ったんです。そのためにはネンドのデザイナーと「混ざる」ことだと。つまりネンドのデザインの考え方を実践できる人たちが、その企業に戻って活躍していくということです。

川島:でもズルいこと言えば、ネンドがいなければ仕事が継続できない状況を作って、ずっと仕事する手もあるじゃないですか。実際、そうやっているコンサルの人がいるって話、聞いたことあります。

佐藤:きれいごとを言うつもりはないのですが、そういうのってあまりクリエイティブじゃないし、健全なかかわり方だと思えないんです。僕らと仕事をしたことを起点に、クライアントの中で、デザインという概念がビジネスに上手く生かされていくことが、僕の意図するところです。

川島:ネンド自身のメリットはどこにあるんですか?

佐藤:共同で新しい組織を作り、共同経営していくという考えなので、企業価値を上げることで、双方がキャピタルゲインを得ることになります。企業にとっては新しい会社に投資することで、そこで培われたデザイン資産を長く有効に使えるわけだし、その会社が持続的成長を遂げるために、一貫したブランディングを行っていくと思うのです。

川島:なるほど、確かにクライアントとネンド双方にとってメリットがある試みです。

佐藤:すでに、何社かのクライアントとこの試みを進めているところです。

川島:先行きどうなっていくのか楽しみです。

ブランドとは目に見えない価値をいかに感じさせるか

川島:最後の質問です。ブランドの定義とは何なのでしょうか?

佐藤:えっ、難しい質問ですね。そうですね、目に見えない価値を、いかに感じられるか、感じさせるかにあるのではないでしょうか。それがあるかないかでブランドの優劣が決まってくると思います。このブランドには、こういう歴史やストーリーがある。あるいは、目に見えていないけれど、他に負けないこういう価値を持っている。そういったところを見出して伝え、価値として提供することが大事だと思っています。そして、目に見えない価値をかたちにするのがデザインの役割。つまり、大事なことを見える化する、使い手が体感できるようにするということです。通訳みたいな仕事といっていいのかもしれません。

川島:ブランドがこれだけたくさんあって、それぞれ切磋琢磨している中、オオキさんの仕事はまだまだ広がっていきそうですね。

佐藤:大事なことは、デザインによって、世の中が少しずつでもいいから、いい方向に変わっていくことだと考えています。どかんと大きなものじゃなくてよくて、「気づいた時に変わっていた」くらいのペースがちょうどいい。どんなにかっこよくても、変化を生み出さないデザインってありますよね。それよりは、たとえかっこ悪く見えても、変化を生み出すデザインの方がいいというのが僕の考えです。たくさんの仕事を担当させていただいていますが、そのひとつひとつで、少しであっても確実に期待を超える成果を出していって、世界を変えることに貢献できればと思っています。

川島:オオキさんの起こす次の変化、楽しみに待っています。