「未来の逆算」をデザインする

川島:デザインの仕事、佐藤さんは普段、具体的にどのように進めていくのですか?

佐藤:デザイナーの仕事は、課題を見つけるところから始まります。なぜなら仕事をご依頼くださる方々は、何の課題を抱えているのか見えなくなってしまっていることが多いから。もちろん、依頼いただくにあたって「うちの問題は~」と丁寧に話をしてくれるんです。でも、よく聞いてみると「うちの問題」は違うところにあること、意外と多いんです。「こうなりたい」と言っているのだけれど、実はそちらに向かった行動ができていないとか。だから、最初の段階で、それをじっくりヒアリングするんです。

川島:客観的に外から見て課題を洗い出し、それを解決していくということですね。

佐藤:そうです。その過程で「この辺はあるな」とか「この辺はいけるな」というのがわかってきて、僕の中で答えのボタンが見える瞬間があるんです。

伊藤(ネンドマネジャー):見えちゃうと、オオキさんはその瞬間から深く考え始めてしまって黙りこむんです(笑)。そういう時には、僕が雑談で“つなぎ”ます(笑)。

川島:長年の付き合いだけあって、絶妙なコンビネーションですね。

佐藤:ただ、見えてきたものって、口で言っただけでは伝わらないので、かたちにしていくことが大事だと考えています。たとえば、これからやろうとしていることは、色にすると何色みたいな。そうやって「見える化」することで共有していくし、それがデザイナーの仕事ではないでしょうか。その意味でデザインとは、「未来の逆算」と言えるかもしれません。

川島:「未来の逆算」ってどういうことですか?

佐藤:依頼してくださる相手の方は、現在地点から未来を見ようとしているわけです。その人と一緒に「未来のゴール」を見据えながら、逆算してかたちを作って提案していく、それが僕の仕事ということです。

川島:「未来」って大きな枠組みだから、勢い、仕事の幅も広くなりますよね。オオキさん、売れっ子だから、仕事の物量は物凄そうだし、その領域が、いわゆる企業ブランディングから、空間、プロダクト、グラフィックまで多岐にわたっていて、物凄く広いですよね。どこまでやれるんですか。

佐藤:ざっくり言うと3パターンくらいあります。1つめは、経営者のビジョンです。経営トップは未来が見えているのだけれど、それをどうやって社内外に発信していくか、そこを手伝ってほしいというケースです。それに付随して、具体的なプロジェクトを遂行してほしいというケースも多いです。それから2つめは、社内の縦割り組織を横断したプロジェクトをやってほしいというケースです。そして3つめは、若手で優秀な人の力を発揮できるプロジェクトをやってほしいというケース。おおよそこの3つの仕事を引き受けています。

川島:いずれも多くの会社が抱えている問題だし、そう簡単に解決できるものでもない。そういった大きな課題を、どのようにして解決に導いているのですか?

佐藤:相手企業あってのお仕事なので、こういうパターンと一概に言えるわけではありません。ただ、いずれもその企業が変わっていくことのお手伝いなので、たとえば環境や空気感を思い切って変えるため、別の実験室みたいな場や部署を作ってもらう場合もあります。そこで起きてくる変化や成果が、本社の仕事に何らかの影響を与え、最終的に大きな意識の変化を生み出すことができるといった考えからです。それにしたところで、即成果が出せる仕事ではないので、長期プロジェクトになることが多いですね。

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