おしゃれもグルメも基本的に興味なし!

川島:オオキさん、デザイナーがいちばん大事にしなくてはいけないことって何ですか?

佐藤:僕の場合は「透明であること」です。だから、自分の家には何も置いてないし、服にも興味がないし、デザイン以外のことは、まったく気にしない生活を送ってるんです。

川島:スタイリッシュな家に住んで、ゴージャスな生活を送っていると思っていたのですが。でも「透明であること」とは、◯◯スタイルが好きみたいな偏ったこだわりを持たないこととも言えます。

佐藤:そうかもしれません。僕は四六時中、デザインのことばかり考えているので、趣味と言えるものは何もないし、自分の時間といったものもほとんどない。休みの日だって家からほとんど出ないで過ごしています。やることと言ったら、寝るか、飼っている犬と遊んでいるか、仕事をしているか、ちょっと引きこもりみたいです(笑)。

川島:傍から見ていて、有名デザイナーだから、きらびやかな生活を送っているって思っていたので意外です。

佐藤:服もこうと決めていて、下着からアウターまで、全部「ユニクロ」なんです。かれこれ10年くらい「ユニクロ」一辺倒。白いシャツは50枚くらいは持っているんじゃないかな。それはなぜかというと、まず世界のどこに行っても手に入ること。ニューヨークにも、ロンドンにも、パリにもある。それと、これは「ユニクロ」に限らないことですが、同じものを揃えておいて、何も考えずに着られるのがいいんです。おしゃれなコーディネートとか考えるの、物凄く苦手だし、そういうことに、あまり時間を割きたくないんです。

川島:ゴハンはどうしているんですか、食べるものへのこだわりは?

佐藤:ないですね。食べるのも面倒! 食べ過ぎると、ぼーっとしちゃって仕事できなくなるので、あんまり食べないようにしています。それで、よく行くのは近所のそば屋、そばって何も考えなくていいじゃないですか。おかずがたくさんあると、どの順番に食べようとかって考えなきゃいけないのが面倒くさい。でも、そばなら丼の中にはそばしかないから。

川島:ちょっとおかしな理屈、という気もしますが(笑)。それだけ仕事が好き、デザインが好きってことですね。そしてそれが、オオキさんが言うところの「透明であること」にもつながっていると。

佐藤:そうです。毎日、同じ色カタチのシャツを着て、同じそばを食べ、同じ散歩コースを歩く。常に同じパターンを繰り返すのは、僕自身の調子を落とさないためでもあります。体調も感情も、起伏の上下があまりないようにして、ここぞっていく時にはギアが上がるように心がけているんです。そうやって「透明であること」によって、何かに出会った瞬間に、すぐに色が付いちゃう。それが、僕の持っている唯一の取り柄じゃないでしょうか。たとえば、マグロ漁を依頼されたら、すぐマグロのファンになって、どうやったら漁で結果が出せるかを、ずーっと考えちゃう。つまり、来たものは全部好きになる。それが僕の特殊能力だと思っています。それと、透明でフラットな視線を持ち続けるために、「適度にバカ」であろうとすること。これも大事なことです。

川島:適度にバカって、また難しい話ですが。

佐藤:利口であること、知識があること、失敗しないように考えること、いずれも新しい視点や新しい価値を見出す時に、邪魔になることだと考えています。

 アイデアは、毎日のように出会ったものに対して「はじめまして」と向き合うことから始まるので、透明でフラットな姿勢は不可欠だと考えています。

 だから「適度なバカ」です。そうやって「アイデアが浮かばない状態にならないように」、僕なりに工夫を重ねて生きていますね(笑)。