(前回から読む)
“店持ち小売り”を越える
川島:これからのビームスについて、設楽さんはどんなビジネスを考えているのですか。
設楽:eコマースの時代になっていくと、前回もお話したように、リアル店舗の果たす役割が、もっと明確になっていくと思うのです。自分たちが“店持ち小売り”であることを越えなきゃいけないって強く感じていますね。

1951年 東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、1975年 株式会社電通入社。プロモーションディレクター・イベントプロデューサーとして数々のヒットを飛ばす。1976年 「ビームス」設立に参加。1983年 電通退社。自らをプロデューサーと位置付け、その独自のコンセプト作りによりファッションだけでなく、あらゆるジャンルのムーブメントを起こし、セレクトショップ、コラボレーションの先鞭をつけた。(撮影:鈴木愛子、以下同)
川島:“店持ち小売り”を越えるってどういうことですか?
設楽:うちの持っている特徴って何だろうと考えてみたのですが、行き着いたのは“キュレーション”ということ。そこが、これからうちのビジネスになっていくと思っています。
川島:“キュレーションビジネス”ですか? 何だかインターネットのメディアビジネスと同じですね。
設楽:おととし、実験をやってみたんです。楽天の三木谷浩史さんから「ビームスを出店してほしい」と言われたのですが、うちは既に、アマゾンにもゾゾタウンにも出ているし、自社サイトもやっている。だから、単に楽天に出店しても面白くない。
じゃあ何ができるだろうか。そこで、三木谷さんに、楽天にどれくらいの商品数があるのか、聞いてみたら、何と1億3000万点もあるというじゃないですか。そこでピンときた。ビームスが楽天のキュレーターになって、この1億3000万点の商品を “選ぶ=キュレーション”して、ひとつのビームス仮想店舗を作ってしまおうと。
川島:“キュレーション”つまり「選んで組み合わせる」ということは、バイヤーの仕事そのもの。それをそっくり売り物にするということですね。それって考えてみると、リアルなセレクトショップのビジネスと同じといことですね。
設楽:そうそう。「Rakuten meets BEAMS」というページを作って、ビームスが選んだ楽天の商品を提案してみたんです。これって、ラグジュアリーブランドもファストファッションブランドもできないことじゃないですか。セレクトショップのビームスだからこそできるウェブビジネスなんです。
川島:確かに。でもその場合、誰が選んだかがポイントになってきます。知名度や信頼度が低い人がキュレーションしても、お客さんにとって価値がないわけだから。
設楽:そこに、うちがやる意味があると思ったのです。言ってみれば、ビームスのキュレーションライセンス! 選ぶことによって成立するビジネスということです。そう思ったら、うちには、いろいろなジャンルの“キュレーター=目利き”がいるわけです。アウトドアにめちゃくちゃ詳しいやつとか、自転車のことなら何でも知っているやつとか。

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