「努力は夢中に勝てない」
設楽:でしょう? 僕はいつでもオープンでウェルカムなのがかっこいいと思っているし、ビームスもそういう会社でありたいと思っているのですが、組織がある程度の規模になってくると、たとえば社員の給与テーブルや評価の方法を、理論立てて作っていかないといけなくなります。会社の中でも、安定感を求め、安全策を取ろうとする力学が働くようになってきます。
おそらく上場企業になれば、もっともっとそういう力が強くなるでしょう。僕自身は、ビームスをそんな会社にしたくない。社員には、もっと楽しんで仕事をしてほしいと思っている。「努力は夢中に勝てない」と思っています。
川島:では、どうするんです?
設楽:「実例」を見せるしかないと思っていて。
川島:「実例」ですか?
設楽:ええ。僕が実例になるんです。僕はfacebookもtwitterも、割合とマメにやっているんです。まともな仕事だけじゃなくて、僕自身が楽しんで遊んでいることを、どんどんアップしています。仕事もプライベートもごちゃまぜで。
川島:それは社員に向けて?
設楽:社員はもちろん、周りのお客さんに対しても、「普通の会社の普通の社長とはちょっと違うな」って思ってもらえたら嬉しいと。
川島:社員は確か1500人もいるわけですよね。そうなると、社員ひとりひとりに設楽さんが直接コミュニケーションするのは難しい。
設楽:そうです。これだけ社員がいると、小回りがきかなくなるのも、仕方がないことかもしれません。社長としての思いとか号令といったものが、社員に伝わるまでに相当時間がかかってしまう。昔は僕が舵を切ると、即、直角に曲がれたのに、今は長い列車のように、僕が右方向に曲がっても、後ろの方はまだ直進している。スピード感が必要な時代なのに、これはまずいと感じています。
川島:社長としてもどかしいですね。創業当初の意思は変わっていないのに、それが末端に伝わりづらくなっている。
設楽:僕は、ビームスをさまざまな面を持った「多面体」のような会社にしていきたいと、ずっと思ってきました。だから、同じ形態に見えない新しい仕事を、意識的に作るようにしてきました。でも、ビームス全体からすると、その思いが相当薄まっているのではと、危機意識を持っています。
川島:そんな「多面体」の会社にするために、何をするのか。次回はそこをお聞きしましょう。

*8月25日公開「「面白そう」がなくなったらビームスはおしまい」に続く
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