「会社、回らなくなるじゃないですか、社長!」

川島:さっきもちょっと触れましたが、設楽さんは以前から「ビームスは、多種多様な個性が集う動物園のような会社でありたい」と語っていました。洋服屋さんではあるけれど、いわゆる洋服オタクに偏らず、さまざまな分野に長けている人材がいて、それぞれが元気に活躍している会社が理想だと。

設楽:ビームスは、企業理念はこうで、社員はこうあるべきと謳って、優等生的にそれを遂行していく会社を目指してきたわけじゃありません。いろいろな細胞が集っていて、全体として見た時に、何となくビームスらしくなっている。そんな自由で開放的な会社ができないかと考え、ここまでやってきたのです。

 言い換えれば「個性の集合体のような会社」です。突き詰めていくと、ユニークな連中が集まっている、それ自体がブランド価値をなしているんじゃないかと。ビームスとは「コミュニティブランド」なんだと。そう腑に落ちてきたのは、ここ数年のことです。

川島:コミュニティブランド! 面白いですねえ。

設楽:うん。だけど、「コミュニティブランド」を目指そうよ、という話を社内でしたら、マネジメントの担当部署から大反対に遭いました。「そんなこと言って、自由すぎる連中に好き勝手させていたら、会社、回らなくなるじゃないですか、社長!?」って言われてしまったのです。

川島:なるほど。それは一理ある意見です(笑)

設楽:それでも、うちの会社は、他企業に比べると割合と自由度が高いと思うのです。「どうしてああいう自己管理ができない社員を許しているのですか」って外から言われることもあるくらい(笑)

川島:自己管理ができない社員ですか?

設楽:企画書も書けないし、数字の意識もない(笑)。確かに企業人としてなっていないけれど、そういう人の中に、面白い視点を持っていて、凄いことをやらかしてくれる人っているじゃないですか。

川島:そういう変てこりんな人を、わかって泳がせているかどうかって、企業にとって、次の芽を生み出す余裕みたいなものかもしれないですね。

設楽:そうでしょ。だから僕は、できるだけそういう自由でぶっ飛んだ社員を守るようにしている。ただ、どうしようもないケースもあるわけです。たとえば、2年分の経費精算がいっさいできていない人とか。そうなると結局は辞めていくわけで。

川島:そうやってぶっ飛んだ人が辞めていくと、会社は優等生的な人の集合体になっていく。何かに突出した変てこりんな人がいない企業になっていくということですね。それ、多くの大企業が抱えている課題でもあります。

設楽:いろいろなベクトルを持った人がいるから、ビームスは面白いのであって、ひとつの方向づけを無理強いしてしまうと死んでしまう。社員一人一人の個性を、できるだけ活かしたいと考えているのですが、なかなか難しいですね。

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