茅野:日本の女性の働き方については、男女平等であるべきという人権問題の観点ももちろんありますが、もっと重要なのは、女性が活躍すればビジネスが広がるという、純粋にビジネスの観点でとらえることです。つまり、企業にとって、女性を登用することは、即、利益につながるということ。それを企業自身が自覚してほしい。

川島:商いを標榜する伊藤忠商事らしい発想で面白いです。

茅野:そういう事例はすでにあります。日産自動車は女性役員を登用することで、女性顧客のニーズを商品に反映し、業績を伸ばしています。コンビニ業界女性の視点をビジネスに取り入れて、確実にマーケットを獲得していますよね。業種に関わらず、女性をもっともっと積極的に登用することで、市場開拓ができるはずです。日々の消費生活の周辺では、消費の決定権は女性にあるわけです。お買い物に関する、女性の決定権は、おそらく3分の2、いやもっと占めているのではないでしょうか。にもかかわらず、消費市場に商品を供給している企業の経営陣のほとんどが男性だとしたら、女性のニーズを大きく見損なっている可能性がある。逆にいえば、大きな潜在マーケットがあるはずです。

川島:日産は、この連載にもご登壇いただいた星野朝子さんという女性役員の活躍で、女の人が買いたくなるクルマが増えました。運転しやすさだったり、使い勝手の良さだったり、実質的なメリットを盛り込んだクルマがヒットを飛ばしています。男性マーケッターが考えがちな、女性向けの車なら丸っこくてピンクでいいだろう、というワンパターンから抜け出ました。

茅野:そのあたり、なかなか男性は理解できないですよね。それは女性も同じことで、女性が理解できない男性の消費マインドもあると思うのです。つまり、男女ともに活躍することが企業にとって新規市場開拓の可能性があるということです。

川島:あまりに男性ばかりが登用されていることで、女性市場でのビジネスチャンスを逃しているということですね。

茅野:さらに、女性を積極的に登用することで、企業の中から、新しい創造がもっと増えると思うんです。歴史のある企業ほど、長年培ってきた経験値や常識にとらわれてしまって、新しい創造が生まれてこなくなったりします。そんな組織にたくさんの女性が登用されると、これまでにない発想が練りこまれて、新しい創造を生む可能性大です。新しい発想による新しい市場開拓を実現するため、女性の登用は起爆剤になりえます。

契約にもクリエイティビティがある

川島:最後の質問です。茅野さんにとって、企業のクリエイティビティ=創造性をどんな風にとらえていますか?

茅野:クリエイティビティは、デザイナーとか一部の人だけが持っている才能ではなく、いろいろなところで発揮できるものではないでしょうか。たとえば、契約だってそのひとつだと思うのです。

川島:契約書にクリエイティビティ? 何かフォーマットが決まっていて、それにあてはめていく感じですが。

茅野:いえいえ。契約とは何かというと、将来への道しるべなんです。契約期間中に何か起きた時に、立ち返って確認するものが契約書。そこが本来の意味であり、ビジネスにおいてもっとも重要な起点となります。契約期間という将来を見据え、その仕事の目的とゴールを明快に指し示す。それが契約です。逆に言えば、それさえ明示されていれば、形式的なこだわりは二の次と言っていいかもしれません。

川島:なるほど。でもそれって、物凄い物量の経験値に基づいた知恵の成果でもありますね。

茅野:ある専門性を深く広く磨く中で、いろいろなことを経験することが大事だと思います。いろいろなことを経験してみないと、人間って保守的になってしまう。時として思い切った冒険に踏み出すことが大事です。