東京・JR新宿駅の南口は、商業施設や商店がひしめき、一大ショッピングエリアを築いています。中央を走る甲州街道の片側には「ルミネ1」と「ルミネ2」が、もう片側には「ニュウマン」がそびえ立ち、たくさんの女性で賑わっています。いずれもルミネが運営するファッションビルで、「ニュウマン」は現在、新宿のみですが、「ルミネ」は西口にある「ルミネエスト」も加えて新宿で3店舗、その他、有楽町、横浜など、関東圏中心に15店舗を展開しています。
帰宅途上に利用する駅の上に、おしゃれな服のショップが並んでいる、オフィスを出て家に帰る前に、服を見て回ることで仕事モードを切り替えられる──立地を生かした売り場編集がOL層のニーズをとらえ、人気のファッションビルになっているのです。
今回、お話を聞いたのは、取締役会長を務める新井良亮さんです。JR東日本の副社長を務めた後、ルミネの社長から会長へ――新しい挑戦を重ねながら、ルミネの業容を広げてこられた方。からりと明るく、大胆なことに挑む姿勢を、いつも仰ぎ見てきたのです。新井さんは、ファッション業界の未来をどう見ているのか、人が挑戦するとはどういうことか、これからの女性の活躍など、さまざまなことを聞いてみました。(撮影=北山 宏)

女性に下駄を履かせてもいいのでは
川島:前回は、新しいことに挑戦する時にチームで挑むことの大切さ、知識は堆積していくだけだが経験は熟成されていくという信念、さらに高みに登ろうとする意志の大切さなどについて、お話をうかがいました。実は、そういう視点も含め、ルミネは、女性が働きやすい会社だと感じてきました。

ルミネ会長。1946年、栃木県出身。高校卒業後に旧国鉄に入社。その後、勤務の傍ら中央大学法学部の夜間部を卒業。国鉄民営化後は東日本旅客鉄道(JR東日本)に勤務。人事部勤務を経て、東京支社事業部長に。JR東日本副社長・事業創造本部長を経て副社長の職に就きながら、ルミネ社長に就任。その後、社長専任となり、2017年、会長に就任。
新井:社会の中の半数を占めているのが女性ですから、働き手として男性と対等なポジションにいるのは当たり前のことです。しかも男性は、生理的に子どもを産めないわけです。その意味では、女性が出産・子育てをする期間について、どう評価するかは、社会全体として考えていかなければならない課題です。まずは、子どもを産む、子どもを育てるということが、社会や会社や個人にとって、決してマイナスではなくプラスであると、会社が評価することが肝要ではないでしょうか。ただ、個人個人によって事情が異なるので、一律の制度でくくってしまうのではなく、個別にきちんと話を聞いて、ある程度柔軟に対応していくことが必要と思い、「きらきらルミネ」をはじめとする活動を続けてきました。
川島:私自身も子育てしながら仕事を続けてきたので、会社の中に、「一緒に補い合いながらやっていく」という文化が、しっかり根づかなくては意味がないと感じてきました。
新井:子育て中の女性の負担は、とても大きなものがあって、仕事が全開モードになれないのは当然だと思います。自分の時間がないくらい、仕事に子育てにと追われているのが実態です。だから、子育て期間というのは、仕事をさぼっているわけでなく、子育てに手間暇かけているわけです。本当は下駄を履かせなければならない、履かせていいと、私は思っているのです。
Powered by リゾーム?